朝いちばん、エンジンをかけた直後に、ディーゼル車のようなカラカラ、ガラガラという音がして、暖まると消える。1.3Lの1NR-FEを積むヴィッツやラクティス、パッソ、カローラアクシオなどで、こうした相談は以前からよく見られました。トヨタは2014年に、この音を対象にした9年の保証延長を出しています。ただ、その中身は「ピストンリングが固着してオイルを食う」という話ではなく、燃焼室にたまったカーボンの異音でした。延長はすでに期限切れ。音の見分け方と、いまの選択肢をまとめます。

冷えているときの音を確かめる

トヨタの公式の説明では、冷えている状態で低い負荷の運転を繰り返すと、ピストンの上面とシリンダーヘッドの壁にカーボンがたまり、冷えているときにカーボン同士が当たって音が出る、という現象でした。2013年4月に納車されたラクティスでは、4,000kmで冷えているときだけディーゼルのような音が出て、ディーラーは「あ、出ましたか」と、知っている反応だったそうです。新車の頃からガラガラ音が気になっていたヴィッツは、約9年目の修理で音が消え、加速感も変わったと書いていました。距離よりも、近場の短い運転が多いかどうかで出方が変わると読めます。

音の出方 考えられる原因
始動直後から暖まるまでのカラカラ、ガラガラ。暖まると消える 燃焼室のカーボン同士の接触(保証延長の対象だった現象)
始動直後のガラガラ、回転に合わせて鳴る タイミングチェーン、テンショナー
始動の瞬間だけガリガリ、ジャー VVTのギヤ(カムタイミングギヤ)
セルを回している間だけ鳴る スターター
アイドリングが不安定、加速でもたつく 点火系(イグニッションコイル、プラグ)

ラクティス(7年)で始動直後にガリガリ鳴った例では、ディーラーがカムタイミングギヤの交換・約3万円を提示し、回答者はスターターを疑っていました。整備士のブログでは、9万kmのヴィッツ(NSP135)のアイドリングの不安定が点火系の不調で、コイル類の交換で直っています。このとき燃焼室をカメラで見るとカーボンは比較的きれいだったものの、1NRはカーボンに注意、と添えていました。1NR特有の「ノッキング」の情報は見つからず、ネットに多いヴィッツのノッキングの相談は1999年式の1.0Lなど別のエンジンの話です。

保証延長の中身と対象

トヨタは2014年8月、「ヴィッツなど7車種 1NR-FEエンジンの修理」として、保証を新車登録から9年に延ばしました(トヨタ公式。現在はページが削除されていて、保存版で確認)。音が出た車に限り、ピストン、ピストンリング、オイルノズルを改良品に替え、エンジンのコンピューターのプログラムも補正する内容です。作業はエンジンの中を分解するもので、12時間以上、入庫は約5日という記録がありました。

対象は、ヴィッツ(NSP130・135)、ラクティス(NSP120・122)、パッソ(NGC30)の主に2010〜2013年4月生産、ポルテ・スペイド(NSP140)とカローラアクシオ(NRE160)の2012〜2013年5月生産、iQ(NGJ10)の2009年6月〜2014年6月生産の一部です。いちばん遅いiQでも、登録から9年で2023年ごろに期限を迎えていて、2026年のいまはすべて期限切れの計算になります。2013年5月以降に作られたヴィッツやラクティスは対象に入っていませんでした。

「ピストンリングでオイル消費」は別のエンジン

修理の内容にピストンリングの交換が入っていたため、「1NRはリングが固着してオイルを食う」と混同されがちです。ただ、ピストンリングの周りの汚れでオイル消費が増えるという保証延長は、1.5Lの1NZ-FE(カローラ、シエンタなど、2011年)の話で、1NRとは別でした(こちらは民間のまとめで確認したもので、トヨタ公式ページは見ていません)。

どうやったら直るか

期限切れのいま

保証延長の期間中なら、改良品のピストンへの交換が無料で受けられました。期限が切れたあとに有償でピストンを替えた実例や、その金額、民間の整備工場との差は見つかっていません。エンジン内部を分解する作業なので、相応の費用になると考えておいたほうがよさそうです。

燃焼室の洗浄剤などでカーボンを落とす方法を勧める整備工場はあるものの、1NRのこの音がそれで直ったという実例は見つかりませんでした。トヨタはこの件をリコールではなく「修理」として扱っていて、公式の文面に危険性の記載はなく、走れなくなった事例も見つかっていません。音だけなら様子を見ながら乗る、近場だけの運転を減らす、という選択も現実的でしょう。指定オイルは0W-20です。

アイドリングストップのキャンペーンは別件

2015年2月から、ヴィッツ(NSP130)とラクティス(NSP120)の2014年3〜10月生産のアイドリングストップ車を対象に、サービスキャンペーンが行われています(トヨタ公式で確認)。冷えているときなどにアイドリングストップのあと自動で再始動しないことがある、という件で、対策はプログラムの修正。カーボンの音とは関係ありません。

直すにはこれくらいの費用がかかる

車種 内容 店 金額
ヴィッツ 130系 約9年 1NR-FEの修理(保証延長、約5日入庫) ディーラー 無料
ヴィッツ 130系 2018年実施 1NR-FEの修理(12時間以上) ディーラー 無料
ラクティス 7年 カムタイミングギヤ交換(始動時の異音、実施せず) ディーラー見積もり 約3万円
ラクティス H21 約6万km(参考) CVT交換 整備工場 約30万円

集まった費用の実例は、保証延長での無料修理と、別の原因の見積もりだけでした。期限が切れた今、カーボンの音を有償で直す金額は分かっていません。始動直後の音でも、VVTのギヤなら3万円前後、スターターや点火系ならそれぞれの部品代で済むので、まずどの音かを診てもらうところから始めたいところです。

同じ時期に重なるもの

10年前後の1NR車は、イグニッションコイルとプラグ(9万kmで失火の例)、燃料ポンプ(始動不良で疑われた例)、スターター、CVTも交換時期に入ってきます。加速時の音は加速時のカラカラ音の記事、オイルの減りは2AZのオイル消費の記事、セルの不調はスターターの記事にまとめました。