発進のたびにガタガタと振動が出る。ある日、メーターにギアボックスの警告とPRNDSの点滅が出て、DにもRにも入らなくなった。フォルクスワーゲンのゴルフやポロ、アウディのA1やA3、A4で使われているデュアルクラッチ(VWはDSG、アウディはSトロニック)では、こうした故障がよく知られています。「10年保証がある」という話も見かけますが、それは中国での措置で、日本では実施されていません。症状からの見分け方と、国内で出ているリコール、修理の段階ごとの費用をまとめました。
どこが壊れているかを確かめる
まず、自分の車のミッションが乾式か湿式かを知っておくと話が早くなります。小排気量の車に多い乾式7速(DQ200)はオイルが1.5〜1.7Lほどで、クラッチを冷やす仕組みを持たず、渋滞や暑さに弱いとされてきました。GTIなどの湿式6速(DQ250)、A4・A5・Q5の縦置き湿式7速(DL501)、Q3の湿式7速(DQ500)は構造が違い、壊れ方も変わります。
| 症状 | 疑わしい部分 |
|---|---|
| 発進・後退・低速のクリープでの振動(ジャダー)、暖まると強まる | 乾式クラッチの摩耗(ジャダーの8〜9割) |
| 警告灯、PRNDSの点滅、DやRに入れても動かない、突然走れない | メカトロニクス(油圧の低下、基板の不良) |
| 6速とRに入らない | シフトフォーク(内部ベアリング) |
| 発進のギクシャク、クリープが無くなる、走って10〜60分で警告灯(縦置き湿式) | メカトロニクス、クラッチ |
| 発進時の振動だけ | 点火系(プラグ)のこともある |
警告灯は、黄色の点灯なら早めに点検、赤や点滅なら走行を控える目安とされています。乾式のクラッチの寿命は平均6万〜8万kmで、渋滞や短距離が多いと3万〜5万kmに縮み、高速中心なら10万km以上持つ、と専門店は見ていました。2010〜2014年式の乾式の初期型で5万〜8万kmに多い、という記述もありますが、こちらは出典がはっきりしません。
中国では2013年に7速DSGの大規模なリコールがあり、そのとき「10年16万km」の保証延長も行われたと伝えられています。日本ではこの延長は適用されず、リコールで良品に替えれば十分という立場だったと報じられました。国内で用意されているのは有償の延長保証(新車から最長5年)だけ。ネットで見かける「DSGは10年保証」という情報をそのまま信じて販売店に持ち込むと、話がかみ合わないことがあるので注意したいところです。
国内のリコール
国内では保証延長の代わりに、リコールが何度も出ている状況。VWは、基板の材質の不良でヒューズが溶断し再発進できなくなるおそれ(2013年、約9.1万台)、ギアオイルが不適切でコンピューターがショートするおそれ(2014年)、メカトロニクスのアッパーハウジングのねじ切り不良で亀裂が入り油圧が下がるおそれ(2019年、30車種約17.6万台)、アキュムレーターの取付部の亀裂(2020年)、そして対象漏れの追加(2022年)と届け出ています。アウディもA1・A3・TTなどで2013年と2020年に同様の内容が出ていました。いずれも最悪は走行できなくなるとされ、対策品への交換やプログラムの書き換えが処置の中身です。自分の車が対策済みかは、販売店で車台番号から確かめられます。
どうやったら直るか
修理の段階
専門店の説明では、直し方は段階的です。学習のリセットと再調整、クラッチの交換(シム調整と基本設定が必須)、メカトロニクスの修理(中の配線や部品の交換)、メカトロニクスの交換(新品・中古・リビルト)、ミッションのオーバーホールや中古・リビルトへの載せ替え、新品のASSY交換。ディーラーはメカトロニクスやミッションの新品交換が基本で、民間の専門店は中古や修理で費用を抑える方法を持っています。ギアが入らないときにNに入れて車を前後に揺すり、再始動すると動くことがありますが、あくまで一時しのぎです。
放置するとどうなるか
クラッチの焼き付きからメカトロニクスの制御のずれへ進み、最後は走れなくなるとされています。新品のメカトロニクスの供給が細りつつあるという指摘もあり、年数の経った車では、中古やリビルト、修理で直せる店を探すことが現実的な選択肢になっていました。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| ポロ6R H21 3万km未満(乾式) | 中古メカトロニクス | 民間専門店 | 10万〜15万円(ディーラー新品は28万〜30万円) |
| A4(8K)・A5 | DSG修理 | 民間専門店 | 112,860〜157,674円 |
| Q3 H24 2.0TFSI(DQ500) | ソレノイドバルブ+オイルほか | 民間専門店 | 181,500円 |
| A4・Q5 | メカトロニクス修理 | 民間専門店 | 約22.4万円 |
| 乾式(店頭価格) | クラッチ交換/メカトロニクス交換 | 民間専門店 | 約33万円/約50万円 |
| A5 H23 | メカトロニクス修理 | 民間専門店 | 336,083円 |
| ゴルフ5 GTI 2006年 6.7万km(湿式6速) | メカトロニクス新品 | ディーラー見積もり | 約44万円 |
| ポロ6R | ミッション交換 | ディーラー見積もり | 約100万円 |
乾式のクラッチ交換は20万〜33万円、メカトロニクスは中古なら10万円台から、修理で15万〜34万円、新品で30万〜50万円。ディーラーでミッションごと替えると100万円前後、縦置きの湿式では300万円を超える見積もりもあると専門店は書いていました。ポロ6Rやゴルフ7で、保証期間内にメカトロニクスや対策クラッチへの交換が無償で行われた例もあります。民間の専門店とディーラーで数倍の差が出る修理なので、見積もりは両方取って比べたいところでしょう。
同じ時期に重なるもの
DSGの不調が出る年数のVWやアウディは、ウォーターポンプやサーモスタット、イグニッションコイル、タイミングチェーン、オイル消費と、エンジン側の持病も並ぶ時期です。ミッションに数十万円をかけた翌年にエンジンで大きな見積もり、という重なり方もあり得るでしょう。同じデュアルクラッチの話はボルボV40の記事やジュリエッタの記事、アウディのオイル消費はA4の記事で扱っています。