走行中にメーターへ「トランスミッション性能が低下しています」と表示が出て、2速から上に上がらなくなった。アクセルを離すと1速まで一気に落ち、強いエンジンブレーキがかかる。ボルボV40(2013〜2019年)でこうした相談をよく見かけますが、このミッションの不具合が集中しているのは、デュアルクラッチ式の「パワーシフト」を積んだ一部の型式だけでした。自分の車が当てはまるかの見分け方、再始動で消えたときにやっておきたいこと、部分修理と本体交換の費用をまとめました。

自分の車が該当するかを確かめる

V40のミッションは型式によって3種類あり、カタログ上はどれも「6速AT」などと書かれていて見分けにくくなっています。確実なのは、車検証の型式で判断する方法です。

グレード・時期 型式・エンジン ミッション
T4(2013年2月〜2015年7月)、クロスカントリーT4ノルディック MB4164T(1.6L 直4ターボ) ゲトラグ製6速デュアルクラッチ(パワーシフト)
初期のT5 R-DESIGN、クロスカントリーT5 AWD(〜2014年) 2.0L 直5 アイシン製6AT(トルクコンバーター式)
2014年11月以降のT5、2015年以降のクロスカントリーT5、D4 2.0L 直4(Drive-E) アイシン製8AT
T3・T2(2015年7月以降) 1.5L 6AT(トルクコンバーター式)

2015年7月にT4が廃止されてからは、デュアルクラッチの車はありません。D4の不具合として語られる症状は、スロットルやインテークのフラップの不良で時速50kmほどに制限されるもので、変速の異常とは別物でした。ABSの車輪速センサーの不良でも、チェックランプとともにスピードが出なくなることがあります。

出る症状と原因

パワーシフトの不調では、2速以上に上がらない、奇数段や偶数段しか入らない、Rに入らない、変速時のショックやジャダー、加速中のうなり音とチェックランプ、といった症状が報告されています。気温が氷点下の日に奇数段とRで出やすいという記録もありました。原因として挙がっていたのは、シフトフォークの動きを見るセンサーやアクチュエーターの異常判定、油圧を制御するバルブユニットの不良、フルード交換のあとのエア抜き不足と油量不足(約200cc足りなかった例)、そしてクラッチや内部の摩耗です。発生時期は納車直後の6,000kmから8.6万kmまで幅がありました。

ある輸入車専門店は、日本での発生は10台に1〜2台という見方を示していますが、根拠は書かれていません。予防策として挙がっていたのは、フルードとフィルターを4万km以内ごとに替えること、交換後のエア抜きと油量の確認を確実にすること、DからRへの切り替えは完全に止まってから行うこと。新車の6,000kmや1,000kmで出た例もあり、乗り方だけで防げる故障ではないものの、整備の記録が残っているかどうかは、あとで交渉するときの材料にもなります。

どうやったら直るか

再始動で消えても、記録を残す

エンジンをかけ直すと表示は一時的に消えることが多いものの、たいてい再発します。ここで大事なのは、消えたからと放っておかず、ディーラーの診断機で故障の履歴を記録してもらうこと。5万kmの2015年式T4では、履歴に13回のエラーが残っていて、納車前から出ていたことが分かり、ミッション交換の費用を販売店が負担していました。走行中に1速へ落ちて急減速し、後ろの車に追突されかけた例も複数あるので、症状が出たら無理に乗り続けないほうが安全です。

部分修理と本体交換

安く直る可能性があるのは、フルードの量とエア抜きの確認。抜き直して補充したら直った例がありました。次がバルブユニットの交換や、ミッションの制御コンピューター(TCM)の交換、制御プログラムの更新です。ただ、ディーラーの対応は基本的に本体の丸ごと交換で、2014年当時の交換品はリビルト品、取り寄せに1週間から1か月かかったという記録でした。交換したあとに再発した例も報告されています。民間の工場でリビルト品に載せ替えた実際の見積もりは見つかりませんでした。

国内でのリコールや保証延長は、公式には確認できていません。海外のデュアルクラッチの保証延長や訴訟の話は、主にフォードの別のミッションに関するもので、混同しないよう注意が要ります。

直すにはこれくらいの費用がかかる

車種 内容 店 金額
2014年式 約1,000km バルブユニット交換 ディーラー(保証) 無償
2014年式 6,000km ミッション本体交換(リビルト品) ディーラー(新車保証) 無償(保証外なら60万〜100万円と説明)
2015年式 T4 5万km ミッション交換 ディーラー(販売店負担) 約55万円
2013年式(中古で購入、6年落ち) デュアルクラッチ交換 ディーラー見積もり 約80万円
一般論 TCM交換/本体交換 中古車店の解説 40万〜50万円/78万〜120万円
一般論 本体一式交換 輸入車専門店 70万〜100万円

本体の交換は55万〜80万円、一般論では100万円近い数字も出ています。フルードとエア抜きで直れば数万円、TCMなら40万〜50万円という幅で、どこが原因かで金額は大きく変わる。2013〜2015年のT4はすでに車の値段がこの修理代を下回ることも多く、本体交換をするか、ここで乗り換えるかの判断になる金額です。中古で買って日が浅いなら、販売店の保証やミッション保証の有無を最初に確かめ、履歴の記録を交渉の材料にしたいところでしょう。

同じ時期に重なるもの

V40の定番故障は、ミッション以外にも並んでいます。6万km前後からのタペットカバーのオイル漏れ(5.5万円〜)、冷却水のリザーブタンクの割れ(3.5万円〜)、エンジンマウント、エアコンのコンプレッサーやコンデンサー、メインとサブの2個のバッテリー、D4ならEGRクーラーとインテークの煤。ミッションを直した翌年にエアコンで数十万円、という重なり方も考えられます。同じデュアルクラッチの悩みはVWのDSGの記事やジュリエッタのTCTの記事、ATの不調全般はATとCVTの記事で扱いました。