ゴルフやティグアンの1.4TSIで、アイドリング中に車がブルブル震え、エンジン警告灯が点いた。圧縮を測ると1つの気筒だけ低い。ネットで調べると「ピストンの棚落ち」という言葉が出てきます。棚落ちは、ピストンのリングの溝のあいだの段が割れたり溶けたりして欠ける故障の俗称で、1.4TSIでも実例がありました。ただ、集めた「圧縮抜け」の事例の多くは、チェーンのコマ飛びやバルブの割れなど別の原因でした。症状での見分け方と、直し方をまとめます。
圧縮が抜けた原因を確かめる
1.4TSIは、ゴルフ5・6、ゴルフヴァリアント、トゥーラン、ティグアン、シロッコ、パサート、シャランなどに積まれたエンジンで、ツインチャージャー(BLG・BMY・CAV)とシングルターボ(CAX・CTH)があります。圧縮が抜けたときの原因は、症状で次のように分けられました。
| 原因 | 特徴 |
|---|---|
| イグニッションコイル、プラグ | 失火した気筒が特定でき、コイルを入れ替えると症状が移る。部品交換で直る |
| タイミングチェーンの伸び、コマ飛び | 複数の気筒で圧縮がゼロ、エンジンがかからない。カムとクランクのセンサーのコード |
| 吸気バルブの割れ、カーボンのかみ込み | 1つの気筒だけ圧縮が下がる。カメラでバルブを確認 |
| ピストンの棚落ち | 1つの気筒だけ圧縮が下がり、出たり消えたりすることも。コイル交換やカーボン清掃では直らない |
2代目シャランで1番のピストンが棚落ちしていた例では、アイドリングの振れが「調子のいいときと悪いときがある」状態で、コイルとプラグを替えても、カーボンを清掃しても直りませんでした。ピストンリングの合わせ口の位置が重なったときだけ圧縮が抜けるので、症状が出たり消えたりした、と書かれています。一方、ティグアン(H27・3万km)で1番の圧縮が0.8(ほかは1.0以上)だった例は、原因がバルブからの圧縮漏れで、棚落ちではありませんでした。ゴルフヴァリアント(CAV)やゴルフ5のGT TSI(BLG)の圧縮抜けは、チェーンのコマ飛びでバルブが曲がっていたものです。
自分でできる見分け方と、分解での確定
圧縮計で測り、低い気筒にオイルを少し入れて測り直す方法があります。圧縮が上がればリングや壁の側、上がらなければバルブ側の漏れの疑い。より確実なのは、気筒にエアを入れて漏れを調べるリークダウンテストです。ただ、棚落ちかどうかは、最後はエンジンを分解しないと確定しません。軽い棚落ちなら異音はほとんど出ない、という解説もありました。白煙やオイル消費と結びつけた1.4TSIの実例は見つかっていません。
原因として挙がるもの
原因として挙がっていたのはノッキングです。2011年4月ごろ、1.4TSIのエンジンのコンピューターを書き換えるサービスキャンペーンがあり、その理由は「適正なノッキング抑制が行われないおそれがあり、最悪の場合ピストン損傷に至る」とされていました。対象として書き写されていたのは、ゴルフトゥーラン、シロッコ、ゴルフ、ゴルフヴァリアント、ジェッタの1.4TSI(トゥーランは2009年6月〜2010年8月ごろの輸入)。ただし根拠は個人のブログでの書き写しで、VWの公式ページでは確認できていません。直噴でピストンにカーボンが付くと実際の圧縮比が上がり、ノッキングしやすくなる、という整備側の見方もあります。指定燃料はハイオクで、レギュラーを入れたことと棚落ちを結びつけた実例は見つかりませんでした。
どうやったら直るか
ピストン交換か、載せ替えか
棚落ちの直し方は、エンジンを降ろして分解し、ピストンを交換するしかありません。シャランの例では作業に12時間以上かかり、部品番号の変わった対策品のピストンを使っていました。シリンダーの壁まで傷んでいれば、ボーリングやブロックの交換になります。トゥーランでエンジンが壊れた例では、予算の都合で中古エンジンに載せ替えていました。H22年式のティグアンでは、修理代が車の価値を超えるとして、原因の追究自体をやめています。応急処置はなく、放置すれば破片がシリンダーを傷めてさらに壊れる、という一般論もありました。
キャンペーンが済んでいるか
2011年のコンピューターの書き換えが済んでいるかは、車台番号でディーラーに問い合わせれば分かるはずです。中古で買ったTSIなら、一度確かめておくと安心でしょう。ピストンの保証延長は見つかりませんでした。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 民間の整備工場 | 診断料 | 整備工場 | 1時間7,000円 |
| ゴルフヴァリアント 1KBLG | 警告灯と失火、コイル・プラグ交換(工賃16,000円+部品60,400円) | 整備工場 | 84,040円 |
| 直噴TSI | カーボン除去(4万〜5万kmごと) | 専門店 | 7万〜13万円 |
| シャラン 2代目 | 棚落ちでピストン交換(12時間以上) | — | 金額の記載なし |
1.4TSIの棚落ちでピストンを替えた金額や、中古エンジンへ載せ替えた金額の実例は、今回見つかりませんでした。コイルとプラグなら8万円台、カーボンの除去で7万〜13万円と、手前の原因でもそれなりにかかります。エンジンを降ろす作業になれば、車の価値と比べて修理か乗り換えかを考える場面も出てくるでしょう。ディーラーと民間の比較もありません。
同じ時期に重なるもの
圧縮の不調が出る年数の1.4TSIは、タイミングチェーンとテンショナー、イグニッションコイルとプラグ、インジェクター、吸気バルブのカーボンと、似た症状を出す部品がいくつも重なる時期です。1.2TSIのチェーンはポロの記事、DSGはDSGの記事、国産車の棚落ちはEJ20の記事で扱っています。