朝いちばん、ポロのエンジンをかけた直後の2〜3秒だけ、ガラガラとディーゼル車のような音がする。そのうちエンジンチェックランプが点き、ある日セルは回るのにかからなくなった。2010〜2014年のポロ(6R)の1.2TSIで、タイミングチェーンが伸びたときによく見られる流れです。音が出ている段階で直せば民間で10万〜16万円ほど。コマが飛んでバルブを曲げると、桁の違う修理になります。対象の年式と見分け方、費用をまとめました。
チェーンの伸びかを確かめる
整備工場の解説を並べると、症状は三つの段階で進んでいました。
| 段階 | 症状 |
|---|---|
| 初期 | 冷えた状態での始動直後の2〜3秒だけガラガラ、ガシャガシャ。その後は静か |
| 中期 | エンジンチェックランプ。P3008など、クランクとカムのセンサーのずれのコード |
| 末期 | コマ飛びで、セルは回るのにかからない。圧縮がなく、バルブが曲がっている |
始動の瞬間はチェーンの張りを保つテンショナーに油圧がかかる前なので、伸びたチェーンが波打ってガイドを叩く、と整備士は説明していました。始動直後の数秒だけ鳴って消えるのがチェーンの伸びの特徴で、ずっと鳴る、回転に合わせて鳴る場合は別の原因の可能性があります。初期の音はそのあと普通に走れるので点検が見送られがち、という指摘もありました。2010年式では、エンジンの不調とストールで入庫し、チェーン関係のエラーが出ていた例もあります。
対象は2014年7月までの6RCBZ
この持病が出るのは、型式がDBA-6RCBZ(クロスポロは6RCBZW)の1.2TSI、2010年6月〜2014年7月ごろのポロです。2014年8月のマイナーチェンジで型式が6RCJZに変わり、エンジンもカムをベルトで回す新しい1.2TSIになりました。車検証の型式を見れば、チェーンの車かどうかがすぐ分かります。同じエンジンを積むのはゴルフ6の1.2TSI(1KCBZ)で、ゴルフ6やティグアンの1.4TSIは同じ系統でも別のエンジンでした。事例は2011年式が多く、距離が書かれていたのは約7万kmの1件だけです。
チェーン以外で「かからない」「警告灯」になるもの
VWの公式資料では、ほかにも紛らわしい不具合のサービスキャンペーンが出ていました。2012年4月の1.2TSIのターボのウェストゲートの早期摩耗(ポロ27,083台ほか)は、警告灯とエンジンの出力制限が出る内容で、チェーンとは違い「パワーが出ない」系です。初期の1.4L自然吸気(6RCGG)には、低温時に始動しにくい不具合でコンピューターを書き換えるキャンペーン(2011年4月)がありました。「ポロのエンジンがかからない」には、こうした別の原因も混ざっています。
どうやったら直るか
チェーン一式の交換
直し方は、チェーン、2本のガイド、油圧のテンショナーをまとめて替える作業で、クランクのシールやオイルポンプのチェーンも一緒に替える店がありました。作業時間は5〜6時間。オイルパンを外すついでに、将来の漏れを防ぐ再シールまでした例もあります。交換したチェーンは設計が変更されたものだったと書いた整備工場もありました。オイルについては、ロングライフ指定でも日本の使い方では早めの交換を勧める声が多数。
コマが飛んでからでは遅い
コマ飛びのあとは、圧縮がなくなり、ピストンと吸気バルブがぶつかってバルブが曲がっていて、少なくともシリンダーヘッドのオーバーホールが必要、ピストンも傷んでいる可能性がある、とされていました。そこからは中古エンジンへの載せ替えとの比較になりますが、載せ替えやヘッドのオーバーホールの金額の事例は見つかっていません。音が出ている段階で替えるのが、いちばん安く済む選び方でしょう。
キャンペーンはポロではわずか3台
VWは2011年9月、「タイミングチェーンの設計が不適切で、摩耗により異音が出る場合がある」としてサービスキャンペーンを届け出ています(VWの公式資料で確認)。ただし対象は、ポロでは2010年6〜10月に輸入された3台だけ(ゴルフ1.2と合わせて25台)。「リコールで無償」と書くサイトもありますが、リコールではなくサービスキャンペーンで、ほとんどの6RCBZは対象外です。チェーンの保証延長も見つかりませんでした。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| ポロ TSIコンフォートライン H23 | チェーン交換(始動時のガラガラ音、5時間) | 整備工場 | 102,000円 |
| ポロ 2010年式 | チェーン、オイルパンの再シール、クランクシール、オイルポンプのチェーンほか | 整備工場 | 157,300円 |
| ポロ 6R 約7万km | チェーン交換(オーナーが聞いた見積もり) | ディーラー/町の整備工場 | 約20万円/10万円以上 |
| ポロ DBA-6RCBZ | かからない、圧縮なし、バルブの曲がり | 整備工場 | 診断料1時間7,000円から(修理額は記載なし) |
音が出ている段階なら民間で10万〜16万円。ディーラーの約20万円はオーナーが聞いた額で、ディーラーの実額の記録は見つかりませんでした。H23年式の例は部品92,477円と工賃53,240円から値引きして10.2万円で、部品代だけで9万円台かかっています。ヘッドまで傷めると、この金額では収まらないと考えておいたほうがよさそうです。
同じ時期に重なるもの
チェーンが伸びる年数の6RCBZは、ターボのウェストゲート、7速DSG(DQ200)のメカトロニクス、オイルパンやクランクのシールの漏れも気になってくる頃です。DSGにも2012年に制御プログラムのサービスキャンペーンが出ていました。DSGの故障はDSGの記事、チェーンの音はカムチェーンの記事にまとめています。