バイクでは「カムチェーン」、車では「タイミングチェーン」。呼び方が違うだけで同じ部品です。この記事は車の話。異音の原因がチェーンだと分かったうえで、このまま乗り続けたら何が起きるのかをまとめました。

タイミングチェーン(カムチェーン)の異音、今どの段階か

「音が出てから何ヶ月、何万kmで壊れる」という数字は、整備士のブログにもメディアにもQ&Aにも示されていません。代わりに、車がいまどの段階にいるかで緊急度を判断します。

段階 症状 エンジンの中で起きていること
0 始動直後の数秒だけ鳴る 油圧が立つまでの一瞬
1 温まっても鳴る、常時鳴る、空ぶかしで鳴る チェーンの伸びが確定的
2 警告灯が点く、エンスト、加速が鈍る カムとクランクの位置がずれ始めている
3 音が大きく荒くなる テンショナーが限界を超え、チェーンが暴れる
4 始動できない コマ飛び。圧縮が抜ける
5 始動できない バルブとピストンが当たり、バルブが曲がる

段階0は問題ないという見方が複数あり、始動時のガラガラ音の記事で扱っています。この記事の入口は段階1です。温まってもジャラジャラと大きな音が出るなら、チェーン周りの異常はほぼ確定です。空ぶかしで鳴る車を分解したら、テンショナーが伸びきって張力がかかっていなかった例があります。

段階2の目印は、P0016という診断コードです。整備士は「このコードが出たらほぼ間違いなくチェーンが伸びている」と言います。排ガスが基準値を超え、警告灯が点いたままでは車検に通りません。急な踏み込みで出力が落ち、合流や右折で加速できない危険も出ます。

段階3からは、テンショナーの調整範囲を使い切って進み方が急になります。ある軽自動車では、押し出し部分が限界を超えて突出していたのにチェーンはたるんだままでした。

音の出どころがチェーンではない場合もある

原因が分かっているつもりでも、一度疑う価値はあります。チェーンを交換したのに冷間時の音が再発し、本当の原因がピストンピンのガタだった例があります。

タイミングチェーン(カムチェーン)の異音を放置するとどうなるか

放置した先に待っているのは、「切れる」ではなく「伸びる」による故障です。現役の整備士は、チェーンが切れてエンジンが壊れた事例は一度も体験していないと明言しています。一方、伸びてコマ飛びし、バルブが当たった例は経験しています。

コマ飛びとは、チェーンが歯車から1コマずれることです。バルブのタイミングが大きくずれて圧縮が抜け、エンジンがかからなくなります。ある輸入車では全気筒の圧縮不足と吸気側が90度ずれた状態でしたが、調整と部品交換で直っています。

その先が、バルブとピストンの接触です。多くの場合はバルブが曲がり、シリンダーヘッドを降ろす修理になります。9万km走った国産SUVでは、始動する場面でチェーンが切れ、「バルブが曲がっているだろう、修理は30万円以上」として買い替えを勧められていました。

「そうそう切れない」と言われた2ヶ月後に切れた例

音が出てから止まるまでを追える例があります。あるミニバンは6万km台でカラカラ音が出始めました。8ヶ月後にディーラーで伸びを指摘され、見積もりは18万円。「そうそう切れない」と言われて見送ったところ、その2ヶ月後、一般道を走行中にエンストしてチェーンが切れ、エンジン交換になりました。音が出てからおよそ10ヶ月です。所有者はオイルを2,500〜3,000kmごとに交換していたといいます。

チェーンならではの事情もあります。切れない前提で設計されているぶん、ピストンに彫られたバルブの逃げがベルトの車より浅いことがあり、万一飛んだときはかえって当たりやすい構造です。

伸びたチェーンの車でオイル交換をすると、翌朝の油圧の立ち上がりが遅れてコマ飛びが起きることがある、という整備士の指摘もあります。オイル由来の音はカラカラ音の記事で触れています。

「交換不要」はオイル管理が良ければの話

メーカーはチェーンの定期交換を定めておらず、メディアは「実質交換不要」と書いています。ただ現場の実感は違い、軽自動車のあるエンジンでは8万km台で警告灯が出る例が増えているといいます。管理が悪ければ5〜6万kmで伸びきり、良ければ20万kmを超えても鳴りません。「交換不要」は「オイル管理が良ければ」を省いた言い方です。チェーンの摩耗を抑える添加剤が入るのはSP規格からで、それ以前のオイルには対策がありませんでした。

タイミングベルトとは壊れ方が逆です。ベルトは突然切れるので10万kmで定期交換、費用は3万円程度。チェーンは伸びるので、症状が出てから交換になります。

タイミングチェーン交換の修理代の目安

チェーン交換の費用は10〜20万円が相場で、ベルトの3〜5倍かかります。

内容 費用の目安
テンショナー単体の交換 3万円程度
軽自動車(警告灯が出た例)の試算 約12万円(工賃だけで5万円以上、作業6時間超)
12万6千km走ったミニバン、チェーン・テンショナー・ガイド一式 16万円
輸入車 工賃込みで20万円から
切れた後(バルブ曲がりの推定) 30万円以上。買い替えを勧められた

車種によってはエンジンを降ろさないとカバーが外せず、工賃が大きく変わります。

タイミングチェーンの異音、3つの選択

段階と修理代の幅がつかめたら、選べる道は3つです。

直す

警告灯が点いた段階2以降なら、見積もりを取って交換に進む段階です。コマ飛びの前に替えれば、チェーン周りの部品と工賃で収まります。

しばらく様子を見る

段階1にいて警告灯が出ていないなら、この選択も現実的です。12月に「修理は春になってから」と言われた人に対し、回答者は「チェーンが伸びるのは昨日今日の話ではない。工場が春まで持つと判断したならそれが正解。ただし優しい運転を」と答えていました。警告灯が点いたら、段階が進んだ合図です。

乗り換える

見積もりが10万円を超えるなら、修理代と今の車の価値を並べて見る意味があります。Q&Aサイトでも「20万円払って直すか、乗り換えるか」は実際に議論されている問いです。

今の車にいくらの値が付くかは、メーカーと車種、年式などを入れれば、その場で概算が分かります。金額を確認したうえで直すか乗り換えるかを決められますし、査定額に納得できなければ売らない判断もできます。

修理の前に「1分」だけ

今の愛車にいくらの値がつくのか。これを知らないまま修理をすると、後から取り返せません。たとえば修理に20万円かけても、愛車の価値が20万円上がらないのはご存知ですよね。

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