走行中に「トランスミッション高温」の表示が出て、急に加速しなくなった。止まると焦げ臭い。フィット3ハイブリッドやヴェゼル、シャトルなどに積まれたi-DCD(7速DCT)で、こうした相談がよく見られます。ただ、渋滞の上り坂で熱がこもって止まるのは保護のための制御で、クラッチのフルードが漏れる故障とは別物でした。後者には初度登録から9年の保証延長がありますが、多くの車がちょうど期限を迎える時期です。見分け方と、DDC交換の費用をまとめました。
熱による停止か、故障かを確かめる
i-DCDの不調で挙がるのは、発進や変速のときのジャダー、変速ショック、異音、「トランスミッション高温」の警告、焦げ臭さ、加速しない・クラッチが滑る、といった症状です。同じ高温の警告でも、原因は大きく二つに分かれました。
| 状況 | 主な原因 | 修理 |
|---|---|---|
| 渋滞の上り坂でノロノロ走行中に警告、止まる。冷えたら走れる | 乾式クラッチの半クラッチの熱で、保護の制御が働いた | 基本は不要 |
| 高速走行のあとや普段の走行で警告、焦げ臭い、フルード漏れ、滑り | 偶数段クラッチの樹脂ピストンが溶け、シールが破損 | DDC交換(保証延長の対象) |
| 発進時のジャダーだけ | クラッチの摩耗、学習値のずれ | 学習のやり直しや点検 |
GP5のフィット(2014年式・16万km)では、走行中に突然加速しなくなって高温の表示が出て、停車後に焦げ臭くなりました。ディーラーの診断は、樹脂ピストンが溶けてシールが壊れ、クラッチのオイルが漏れて滑った、というもの。別のフィットでは、前にも後ろにもほとんど進まず、下回りにフルードが漏れていて、DDCの小さなOリングの劣化が原因でした。
渋滞で止まる仕組み
i-DCDはモーターで発進するため、上り坂の渋滞でバッテリーが減ると、エンジン側のクラッチを半分つないだ状態で低速走行が続き、熱がこもります。2022年11月の日光いろは坂の大渋滞で複数台が止まったとされ、その後の帰省渋滞でも話題になりました。気温20度を超える季節の渋滞が危ないとする解説もあります。車間をあけて時速4km以上を保つ、エアコンなどの電気の負荷を減らしてモーター走行を長くする、マニュアルモードでギヤを固定して変速を減らす、といった工夫が紹介されていました。警告が出たら、安全な場所に止めて冷やすのが先決です。
高速道路の合流で突然エンジン側のクラッチが切れたジェイドの例では、奇数段側のモーターで低速と後退はでき、自走でサービスエリアの駐車場まで逃げられたそうです。その後、レッカーでディーラーへ運ばれました。
どうやったら直るか
DDCの交換
故障なら、DDC(デュアルドライクラッチ)ユニットの交換が基本。ミッションを降ろしてDDCを替え、ハウジングの中を清掃し、7項目のキャリブレーション(学習)まで行って約8時間、という整備工場の記録がありました。交換後にホンダの診断機での学習が要るのでディーラーが現実的、という回答がある一方、この記録は民間の認証工場のもので、ディーラーでなければ直せないわけではありません。
ディーラーで「ミッション丸ごと交換」と言われた例もあり、2015年式のシャトルでは分解点検をせずに65万円の見積もりでした。DDCの交換で済まないかを聞いてみる価値はあるでしょう。修理後2.7万kmで再び故障したフリードの体験談もありました。放置すれば滑りが進み、走れなくなってレッカーを呼ぶことになります。
9年の保証延長と、その期限
ホンダは2020年7月、DDCの保証を「初度登録から5年または10万km」から「初度登録から9年」に延ばしました(ホンダ公式で確認)。距離の上限はなくなっています。原因は、偶数段クラッチのベアリングのグリスが少ない状態で長時間の高速走行を繰り返すと、樹脂ピストンが溶けるというもの。対象はフィット(GP5・GP6)、ヴェゼル(RU3・RU4)、シャトル(GP7)、フリード・フリード+(GB7・GB8)、グレイス(GM4・GM5)、ジェイド(FR4)で、製作期間は平成25年8月〜平成29年11月(車種で違う)。販売店でフルードの量を点検し、減っていればDDCを新品に交換します。
2017年に登録した車でも、2026年中に9年が過ぎます。対象車の多くはすでに期限切れか、ぎりぎりの時期。車検証で初度登録の年月を確かめ、期間内なら販売店に点検を頼むのが先でしょう。渋滞の熱で止まる現象は、この保証延長の対象ではありません。保証期間内なのに運転の仕方のせいにされたという声や、ディーラーが自分から保証延長を案内しなかった可能性を指摘する回答もありました。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| フィットHV GP5 2014年式 16万km | DDC交換 | ディーラー見積もり | 32万円 |
| フィットHV GP5 2014年式 | DDC交換(保証対象外) | ディーラー | 約30万〜40万円 |
| フィットHV | DDC交換(部品254,000円+工賃60,000円)+学習、約8時間 | 民間の認証工場 | 345,400円 |
| シャトルHV 2015年式 | トランスミッション交換 | ディーラー見積もり | 65万円 |
DDC交換なら30万円台前半、ミッション丸ごとの交換と言われると65万円。民間の34.5万円とディーラーの32万円に大きな差はなく、部品代が25万円を占めるため、店を変えても安くなりにくいテーマです。リビルトや中古の事例は見つかりませんでした。保証が切れたばかりなら、点検記録を確かめる、ホンダの市場措置の窓口に相談する、別のディーラーで見積もりを取る、といった手が回答に挙がっていました。
同じ時期に重なるもの
DDCの故障が出る登録10年前後のi-DCD車は、駆動用バッテリーの交換時期とも重なります。ジェイドの例では、高温の警告と一緒に「ハイブリッドバッテリー出力低下」も表示されていました。DCTのフルードをこまめに替えるよう勧める声も。フィットの以前の型のジャダーはフィットのジャダーの記事、ホンダのCVTはホンダのCVTの記事にまとめました。