エンジンをかけた直後、ボンネットの中からキュルキュルと鳴る。ベルトを交換して静かになったのに、2か月ほどでまた鳴き始めた。ワゴンRやパレット、ハスラー、スペーシアで、この「替えても治らない」相談はとても多く見かけます。原因は世代によって違い、K6Aエンジンの旧型はプーリーの錆、R06Aエンジンの新しい型ではベルトを張るテンショナーが疑わしい部品です。音の聞き分け方と、段階ごとの直し方と費用をまとめました。
どこが鳴いているかを確かめる
典型的なのは「始動直後にしばらく鳴き、暖まると消える」という鳴き方。雨の日や冷え込んだ朝、エアコンをつけたときに強く出るのは、ベルトが滑りやすい条件が重なるためです。まずは音の種類と、鳴く条件から絞り込みます。
| 音・条件 | 疑わしい場所 | 主な世代 |
|---|---|---|
| キュルキュル。始動直後や雨の日に出て、暖まると消える | ベルトの摩耗、プーリーの錆 | MH21S・MH23S、パレット MK21S |
| エアコンをつけたときだけ鳴く | ベルトの張り不足、コンプレッサーのブラケットの曲がり | 旧型に多い |
| 雨の日だけ鳴く | カウルトップから水が垂れ、ベルトが濡れている | パレットでの例 |
| キュッキュッ。始動後十数秒だけ鳴く | オートテンショナー | R06AのISG車(MH44S・MH55Sなど) |
| カラカラ、キャラキャラという金属音 | テンショナープーリーやウォーターポンプのベアリング | 両方 |
ベルトに鳴き止め剤を吹いて音が変われば、ベルトとプーリーの問題。変わらなければ、どこかのベアリングが傷んでいる可能性が高くなります。ベアリングの音はシャリシャリ音の記事で詳しく扱いました。
旧型は錆、新型はテンショナー
K6Aを積んだMH21SやMH23Sでは、クランクやオルタネーター、ウォーターポンプのプーリーに錆が出て、それがヤスリのようにベルトを削ってしまう。ベルトが痩せて張りが抜けるので、新品に替えても数か月で同じ音に戻るわけです。整備工場の多くが「K6Aの持病」と書いていて、4万km以下で起きた例もあり、距離より放置期間の長さで錆が進むと指摘されていました。一方、S-エネチャージやマイルドハイブリッドのR06Aは、オートテンショナーが2個でベルトを強く押す構造。4万kmを超えるとベルトにひび割れが出やすく、5年を過ぎたら距離が少なくても確認したい、という整備工場の見方があります。
どうやったら直るか
直し方は段階的で、張り調整、ベルト交換、プーリー交換、ブラケット交換の順に費用が上がっていきます。最初のベルト交換で鳴きが戻った場合は、次の段階へ進む合図と受け取るのが現実的でしょう。
旧型はプーリーまで替える
錆びたプーリーを残したまま新しいベルトを掛けても、同じように削られます。オルタネーターとクランクのプーリーは単体で交換できますが、ウォーターポンプのプーリーは単体の部品が無く、ポンプごとの交換になる。ここで金額が大きく変わります。エアコン使用時だけ鳴くなら、コンプレッサーのブラケットが曲がってベルトとプーリーが平行になっていないこともあり、ベルトだけ替えても治りません。雨の日だけ鳴くパレットでは、カウルトップの防水テープを貼り替えるだけで直った例もありました。
新型はテンショナーとベルトを一緒に
ISG車のベルトは伸ばして掛けるストレッチベルトで、一度外すと再使用できない。テンショナーは片方が悪くなるともう片方も近い状態にあることが多く、2個とベルトをまとめて替えるのが一般的です。新車から間もない車では、テンショナーの不良が保証修理で無償になった例がありました。
スプレーと放置
鳴き止めスプレーについては「一時的に止まるだけ」「スズキ車にはほとんど効かない」と、整備工場の評価は厳しめ。ベルトを放置して切れた場合は、オルタネーターとウォーターポンプが同時に止まり、充電不良やオーバーヒートにつながります。2018年にはMH34S、MK32S、MR31Sなどの一部で、補機ベルトが共振で切れるおそれがあるとしてリコールが届け出られました。対象なら対策ベルトに無償で交換されるので、車台番号で確認しておくと安心でしょう。2020年にもMH44S、MK42S、MR41Sの一部でISGの診断プログラムのリコールがあり、こちらは発電が止まってバッテリーが上がるおそれへの対策。ベルトの音とは別の話ですが、ISG周りを点検に出すなら一緒に照会しておけます。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| ワゴンR MH23S | ファンベルト・エアコンベルト交換 | 目安 | 14,240円(部品5,440+工賃8,800) |
| ワゴンRスティングレー MH44S 2.7万km | ISGベルト・ウォーターポンプベルト交換 | ディーラー | 10,990円(部品5,500+工賃5,400) |
| パレット MK21S 1.3万km | カウルトップ防水テープ貼り替え | 整備工場 | 5,781円 |
| ワゴンR MH23S 4万km以下 | オルタネーター・クランクプーリー、両ベルト | ディーラー | 約65,000円 |
| パレット MK21S H24 | オルタネーター・クランクプーリー、純正ベルト | 整備工場 | 66,825円(うち工賃3万円) |
| パレット MK21S 2008年式 | クランクプーリー+ウォーターポンプ | 整備工場 | 88,000円(部品3万+工賃5万) |
| ワゴンRスティングレー MH23S 4.4万km | プーリー3個、ウォーターポンプ、冷却水 | 整備工場 | 98,681円 |
| ワゴンR MH23S H24 | プーリー2個、ブラケット、ウォーターポンプ、ベルト | 整備工場 | 10万円強 |
ベルトだけなら1万〜1.5万円、プーリーまで替えると6万〜7万円、ウォーターポンプとブラケットまで含めると9万〜10万円強。旧型のベルト鳴きは、この3段階のどこで止まるかで金額が決まります。ISG車のオートテンショナーは通販の部品価格で1個8,450円ほどですが、2個とベルト、工賃を合わせた総額の実例は見つからず、保証が切れた直後のスペーシアで「高額だった」という報告が残っている程度でした。見積もりを取るときは、テンショナーを片側だけ替えるのか両方なのかを確認しておくと比べやすくなります。ベルト交換だけで比べると、整備工場で8,500〜14,500円、ディーラーで13,500〜19,500円という目安が出ていて、差は5,000円ほどでした。
同じ時期に重なるもの
ベルト鳴きが出る頃のスズキの軽は、ほかの補機も順番が来ています。プーリーと一緒に替えることの多いウォーターポンプ、ベアリングが鳴き出すオルタネーター、ガス漏れが定番のエアコン。ISG車ならアイドリングストップの点滅(ワゴンRのアイドリングストップの記事)も同じ時期に重なりやすい症状です。ベルト交換で一度工賃を払っているなら、次に外すときにプーリーやポンプをまとめて替え、ベルト周りを外す回数を減らすほうが総額を抑えられるかもしれません。