朝、車に向かうと片側のリアだけが沈んで傾いていた。エンジンをかけるとしばらくして戻るが、メーターに「停止してください 車高が低すぎます」と出たこともある。メルセデス・ベンツのエアサスペンション(エアマティック、エアボディコントロール)は、W221のSクラスやW211・W212のEクラス、W164のML、W205のCクラスなどで、年数とともに起きやすい故障です。漏れを放置するとコンプレッサーまで壊れる連鎖もあり、W205などにはコンプレッサーのリコールも出ている。見分け方と、修理の選択肢、費用をまとめました。

どこが原因かを確かめる

典型的な症状は、一晩置くと車高が下がる、1輪だけ沈んで傾く、警告表示が出る、コンプレッサーが頻繁に長く動く、段差でプシューと音がする、といったもの。原因の中心はゴム製のエアスプリング(ベローズ)やかしめ部の劣化による空気漏れで、漏れがあるとコンプレッサーに負担がかかり、リレーやバルブブロックの不良にもつながると整備工場は説明していました。

症状 疑わしい部分 確かめ方・補足
1輪だけ下がる その輪のエアスプリングの漏れ(バルブブロックの例も) 石けん水をかけて泡を見る
4輪とも下がる ポンプのヒューズ切れ(どこかの漏れで動きすぎた) まずヒューズを確認
警告が出るのに車高が上がらない コンプレッサー、リレー 診断機で圧縮していないと分かった例
縁石にぶつけた翌日から警告 エアタンクへの配管の破断 W221での例

さくらオートの記録では、W205の左リアが傾いていたのに、原因はエアスプリングではなくバルブブロックの内部の故障でした。1輪だけだからエアスプリング、と思い込まないほうがいい例です。寿命の目安は情報源で幅があり、4万〜9万kmで4本が徐々に漏れ始めるという工場もあれば、7万〜10万km、10万〜15万kmとする記事もありました。コンプレッサーは10万km前後で壊れるという見方です。

エアサスかどうかはグレード次第

気をつけたいのは、すべてのベンツがエアサスではないこと。W212のセダンの多くは前がコイルで、E550やE63などがエアマティック、S212のワゴンは後ろだけ車高を保つためのエアが入る構成。W205もエアボディコントロール付きのグレードに限られます。「W212はエアサス」と一括りにすると誤りになるので、車検証やオプションの装備表で確かめておくと話が早いでしょう(公式資料では未確認)。

どうやったら直るか

部品の選択肢

直し方は、エアスプリング(ストラット)の単体交換、左右同時の交換(勧める店が多い)、コンプレッサーとリレーの交換、バルブブロックの交換、配管やエアタンクの交換です。部品は純正新品、OEM、リビルト(古い部品の返却で安くなる)、社外品、持ち込みから選べます。安い社外品は不良率が高いとして使わない専門店もありました。交換後は水平な場所で車高のキャリブレーションをし、一晩置いて確かめ、車高が変わるとトー角も変わるのでアライメントの調整を勧める店もあります。コイルスプリングへの変換もできますが、構造変更の手続きが要り、Vクラスでは2〜3週間かかった例がありました。

放置するとどうなるか

漏れたまま走るとポンプが動き続けて焼損し、前の車高が保てないとハンドルを切ったときにタイヤがフェンダーに当たる、と専門工場は書いています。W221では前左が完全に落ちてハンドルが切れず、自走できなくなった例がありました。逆の流れもあり、W205でコンプレッサーが不良になって走行中に車高が落ち、右リアのエアスプリングとバルブブロックまで壊れた例も。バルブブロックは単独で壊れることは少なく、漏れの二次被害で壊れることが多いそうです。

コンプレッサーのリコール

2022年12月、エアサスのコンプレッサーに付いた減圧弁の材質が不適切で錆びて作動不良になり、走行中に車高が下がるおそれがあるとして、全車のコンプレッサーを対策品に替えるリコールが届け出られています(メルセデス・ベンツ公式で確認)。対象はW205、W213、GLCの前期型と伝えられていて、車台番号で確認できます。過去に自費でコンプレッサーを直していれば返金される場合がありますが、二次被害のエアスプリングやバルブブロックは自費だった、という報告もありました。

直すにはこれくらいの費用がかかる

車種 内容 店 金額
S212 E250ワゴン 2013年 リア左右(部品持ち込み、5時間) 整備工場 工賃のみ3.3万円
W205 エアサス1本 専門工場 8万円(ディーラーは14万円)
W212系 Eクラス リア左右 専門工場 11.5万円〜
W205 C200 約7年目 右リアのエアスプリング+バルブブロック(コンプレッサーはリコールで無償) ディーラー 21万円(当初は4本で最大100万円と言われた)
S205 Cワゴン 2015年 9.3万km リア左右エアスプリング+マウント — 25.8万円
W221 約10万km エアサス+コンプレッサー 専門工場 純正31.36万/リビルト25.25万/リビルト(返却あり)16万円(税別)

専門工場なら1本8万円前後、リア左右で11万〜26万円、ディーラーは1本20万円を超え、全交換で60万円を超えるという相場が出ていました。W221の例のように、純正、リビルト、古い部品を返却するリビルトの3段階で倍近い差がつくことも。最初に「4本で最大100万円」と言われたW205が、実際は21万円で済んだ例は、見積もりの段階でどこまでが本当に必要かを確かめる大切さを示しています。

同じ時期に重なるもの

エアサスが傷む年数のベンツは、コンプレッサーのリレーとヒューズ、バルブブロック、反対側のエアスプリング、配管、レベルセンサーと、エアサスの部品が続けて傷みます。左右同時の交換を勧める店が多いのはこのためでした。電子ステアリングロック(ベンツのエンジンがかからない記事)やサーモスタット(サーモスタットの記事)も、同じ年式で重なりやすい持病です。レクサスLSのエアサスについてはこちらの記事で扱いました。