車検の点検で「スプールバルブからオイルがにじんでいる」と言われた。エンジンの後ろ側、ミッションとの境目あたりが湿っていて、ガレージの床にも跡が残るように。ホンダのVTEC車で、スプールバルブのパッキンからのオイル漏れは定番の一つです。部品は数百円から2,000円ほどで、パッキンだけなら工賃込みで1万円台前半。ただ、まわりには漏れやすい場所が密集していて、取り違えると直りません。見分け方と費用をまとめました。

スプールバルブからの漏れかを確かめる

スプールバルブは、VTECのカムを切り替えるためにオイルの流れを切り替える部品で、エンジンのヘッドの側面にボルト3本で留まっています。漏れはその下、ヘッドとブロックの合わせ目付近から始まり、進むとオイルがボタボタ垂れるようになりました。ステップワゴン(RF3)やストリーム(RN6)では、床に跡が残るほどの漏れになっていた例があります。

漏れやすい場所 見分けのヒント
スプールバルブのパッキン バルブを留めるボルト3本の座面と、その真下から濡れる
ヘッドカバー(カムカバー)のガスケット ヘッドの上の縁から全体ににじむ
カムチェーンテンショナーのOリング、油圧スイッチ スプールバルブのすぐ近く
VTCのオイルコントロールバルブのOリング 同じく近く(i-VTEC)
ディストリビューターのシール(B型など古い世代) 上から伝って下で濡れる

漏れたオイルは下へ伝うので、いちばん下で濡れている場所が漏れ元とは限りません。アコード(CD6)では、スプールバルブの下から垂れていると思っていたら、分解してみると実際はディストリビューターの下からでした。S2000では、定番のスプールバルブだと思ったら隣のブラケットのガスケットで、ガスケットだけでは買えずに部品ごとの交換になった例も。いったんスチーム洗浄してから漏れ元を確かめ直すのが定石で、実際に複数の場所から同時に漏れていることも多くありました。ボルトの座面とその真下から始まるのがスプールバルブ、というのは各事例の作業内容から読み取れる目安です。

VTECの不調とのつながり

エリシオンプレステージ(RR5・H19)では、加速時に異音がして警告灯が点き、診断でスプールバルブの不良が判明しました。パッキンの劣化による漏れも重なっていて、本体を替えたあとはVTECが正常に動いています。S2000では、VTECが働かず加速が悪い原因が、スプールバルブを留めるボルトが折れて油圧が逃げていたことでした。放置すると、カムを切り替えるための油圧が足りなくなる、と整備士は説明しています。

出やすい車種と時期

事例が集まっていたのは、B型・K型・F20C・J型(V6)などのDOHC VTEC・i-VTEC車で、シビック(EK9・EG9)、インテグラ(DC2・DC5)、S2000、ステップワゴン(RF3)、ストリーム(RN6)、エリシオン、オデッセイ、アコードなど。原因はパッキンのゴムの硬化で、「プラスチックのように固くなり、触っただけでポロポロ割れた」(エリシオンRR1・H20)という記録もありました。時期はおおむね10年・10万kmを超えたあたりです。

一方、軽のライフやゼスト(P07A)でスプールバルブからの漏れを直した事例は、今回探した範囲では1件も見つかりませんでした。ライフの「オイル漏れ」の相談は、古い型(JB1)のクランクのリヤシールの話などで、スプールバルブとは別の場所。軽の車で漏れを指摘されたら、まずどの部品からの漏れかを確かめるところから始めたいところです。

どうやったら直るか

パッキンの交換で足りることが多い

基本はパッキンだけの交換で、カプラーを外し、ボルト3本を外して古いパッキンをはがし、清掃してから新しいものを付けます。作業は1時間ほど。パッキンはフィルター(網)と一体になっていて、部品名も「フィルターASSY」なので、替えればフィルターも新品になります。同時に、ソレノイド側のパッキン、油圧スイッチ、テンショナーのOリング、ヘッドカバーのガスケットを替える例が多く見られました。

オデッセイでは、ディーラーがスプールバルブ本体(ASSY)の交換を見積もったのに対し、民間の整備工場ではパッキン交換だけで済むと言われた、という相談がありました。本体の交換が必要なのは、VTECの故障コードが出ている、作動がおかしいといった場合です。

ボルトの折れに注意

古い車ではボルトが固着しやすく、外すときや締めるときに折れると専用の工具が必要になり、工賃が増えます。締め付けトルクは12N·mと小さめ。外したオイルシールは使い回さないこと、と自分で直した人は書いていました。漏れ止めの添加剤では直らないという回答もあります。スプールバルブのリコールや保証延長は見つかっていません。

直すにはこれくらいの費用がかかる

車種 内容 店 金額
EK9系(B型)H10 フィルターASSY(パッキン)1,507円、ソレノイド側539円 自分で作業 部品代のみ
S2000 AP2 パッキン+テンショナーのOリング 整備工場 13,860円
S2000 AP1 カムカバーのガスケット+スプールバルブのガスケット(2時間) 整備工場 23,364円
オデッセイ スプールバルブASSY(部品16,900円+工賃13,000円) ディーラー見積もり 約3万円
エリシオンプレステージ RR5 H19 ASSY 18,300円+工賃4,500円+オイル・エレメント(50分) ガソリンスタンド 33,880円
ゼスト ヘッドカバーのガスケット交換(参考) 整備工場 12,100円

パッキンだけなら1万円台前半、ほかの漏れとまとめて2万円台、本体交換で3万円台。差がつくのは、パッキンで済ませるか本体ごと替えるかです。ASSY交換の見積もりを受け取ったら、故障コードや作動不良が出ているのか、漏れだけなのかを聞いてみる価値があるでしょう。

同じ時期に重なるもの

スプールバルブの漏れが出る10年・10万km超のVTEC車は、ヘッドカバーのガスケット、テンショナーのOリング、油圧スイッチ、クランクのフロントオイルシール、タイミングチェーンのカバーと、オイルのにじむ場所が次々に出てくる時期です。ストリーム(RN6)では、オイルポンプと一体のチェーンカバーも交換していました。チェーンカバーの漏れはチェーンカバーの記事、スバルの漏れはスバルの記事で扱っています。