走り出すとミッションのあたりからゴロゴロと音がして、速度に合わせて大きくなる。発進や減速のたびに、ウィーンといううなり。初代N-BOX(JF1・JF2)やN-ONE、N-WGNでは、CVTから出るこうした異音がよく知られた持病です。ホンダはこの異音に対して保証期間の延長をしていましたが、2026年の今はほぼすべての車が期間を過ぎています。音の見分け方と、保証が使えないときの選択肢、実際に払われた金額をまとめました。
CVTの音かどうかを確かめる
CVTの異音は、整備工場や中古車店の記録で表現がばらばらです。発進時にパキパキ、時速10km前後からゴロゴロ、20km前後からウィーンと段階的に変わるという説明もあれば、加速中だけカラカラ鳴って惰性で走ると消える、回転に合わせてシャンシャン鳴る、という記録もありました。厄介なのは、ハブベアリングやドライブシャフト、ブレーキの引きずりと似た音になること。最初はドライブシャフトを疑ったが原因はCVTだった、というN-ONEの例もあります。
| 音と出方 | 疑わしい場所 | 見分けのヒント |
|---|---|---|
| 速度に応じて大きくなるゴロゴロ、発進・減速時のウィーン | CVT内部のベアリング | 低速やD・Rに入れたときに出やすい |
| カーブやハンドル操作で音が変わるガラガラ | ハブベアリング | 左右に揺すると音が変わる |
| 曲がるときのコトコト | ドライブシャフト | 直進では出にくい |
| 室内から聞こえ、エアコンのときだけ鳴る | ブロアモーター | エアコンを切ると止まる |
整備工場では、リフトで車を上げて聴診器のような道具を当て、ミッション内部から出ているのを確かめてからCVTと判断していました。ある工場は、駆動系の他の部分とベアリングに異常が無いのを確認してから交換を決めた、と書いています。ハブベアリングの音についてはハブベアリングの記事、うなり音全般はウィーン音の記事にまとめました。
原因はベアリングへの噛み込み
ホンダの説明では、CVT内部の加工片がたまたまドリブンプーリーのベアリングに噛み込み、軌道面が剥がれて異音が出る、という不具合です。修理の記録は5.7万〜14万kmに散らばっていて、N-WGNでは1万kmや3万kmで出た例もありました。中古車店の体感では、10万kmを超えた車でおよそ300台に1台、H24〜26年式に多いとのこと。統計ではありませんが、どの距離でも起こりうる故障だと分かります。「D」の表示が点滅する症状との関係は、N-BOXについて整備士が解説した資料が見つからず、はっきりしませんでした。
どうやったら直るか
保証延長は過去のもの
2019年2月1日にホンダが出した措置は、リコールではなく保証期間の延長でした。対象はN-BOX系、N-ONE、N-WGN、S660など14車種で、2011年12月〜2016年12月製造の車。CVTの保証を5年10万kmから7年10万kmに延ばし、登録から6年を過ぎていた車は延長開始から1年としていました。受付期限は公式に書かれていないものの、最後の製造車から数えても7年が過ぎ、今はほぼ全車が対象外と考えられます。リコールではないので、案内のはがきも届きません。
別に、2013年と2015年にはドライブプーリーのシャフトが折れるおそれがあるとしてリコールが出ています。こちらはベアリングの異音とは別の不具合で、未実施ならコンピューターの書き換えなどが受けられるので、車台番号で照会しておく価値はあるでしょう。
選べるのは交換だけ
ベアリングだけを直す部分修理の例は見つからず、ディーラーも民間も、CVTを丸ごと交換する対応でした。選択肢は新品、リビルト、中古の3つ。中古はエンジン付きの車から移植した例や、客がネットで買った中古を持ち込んだ例もあり、6か月か1万kmの保証が付く品もあります。ただ、交換した新品も対策品ではないので、また鳴らないか心配という声もありました。異音が出ていても診断上は走行に支障なしとされ、フルードのストレーナーとフィルターを替えて様子を見ている人もいます。放置した先には、スピードが出ない、走れなくなったという入庫例が残っていました。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| N-WGNカスタム | 持ち込みの中古CVTに交換 | 整備工場 | 88,000円(工賃80,000円) |
| N-BOXカスタム H24 | 中古CVT(部品込み) | 整備工場 | 129,250円 |
| N-BOX G H24 | エンジン付き中古から移植 | 整備工場 | 165,000円(部品90,000+工賃60,000) |
| N-BOX H24 | 中古CVT | 整備工場 | 214,500円(部品135,000+工賃60,000) |
| N-BOX H25 5.7万km | リビルトCVT | 整備工場 | 220,000円 |
| N-WGNカスタム H26 | ユニット交換 | ディーラー | 約23万円 |
| N-BOXカスタム 9.5万km | 新品(見積もり35万円から値引き) | ディーラー | 300,000円 |
| N-BOXカスタム | 新品、延長保証の期間外 | ディーラー | 320,000円 |
民間で中古に替えれば13万〜22万円、リビルトなら20万〜22万円前後、ディーラーの新品は30万〜35万円。工賃は民間で5万〜8万円、作業は5〜8時間ほどでした。差の大半は本体の値段で、中古は在庫探しに時間がかかるという声もあります。10年を超えた初代N-BOXでは、新品の30万円台が車の値段に近づくことも多く、中古で直して乗るか、ここで区切りをつけるかの分かれ目になる金額でしょう。見積もりを取るときは、デフのサイドシールやドライブプレートなど、CVTを降ろすついでに替える部品が含まれているかも確認しておくと比べやすくなります。
同じ時期に重なるもの
CVTの異音が出る年数の初代N-BOXは、エアコンのコンプレッサー(10万円を超える例あり)、パワースライドドア、リヤのパワーウインドウ、オルタネーターやウォーターポンプといった補機の交換も重なる時期です。CVTを中古で直した翌年にエアコンで10万円、という流れになれば、合計は新品CVTの金額に届きます。エンジン側のカタカタ音はN-BOXのエンジン異音の記事で扱いました。CVTの見積もりを取るついでに、エアコンやスライドドアの状態も見てもらうと、次の出費の見通しが立ちます。