40km/hあたりから「ゴー」という低い音が足元に広がり、速度を上げるほど大きくなる。タイヤの音にも似ていて、カーナビの音量を上げてしまえばしばらく忘れられる類の音です。ただ、ハブベアリングが鳴っているなら、放っておいて静かになることはありません。この記事では、音がハブベアリングかどうかを自分で確かめる手順、片側だけ替えるかどうかの考え方、実際の見積もりの数字を順に見ていきます。

ハブベアリングの異音を確かめる

ハブベアリングの音は、路面ではなく速度に反応します。きれいなアスファルトでも荒れた道でも同じように鳴り、40〜50km/hを超えたあたりから「ゴー」「ウォーン」と唸り出し、速度に比例して大きくなるのが典型です。整備工場の説明では、初期は「コー」「シャー」という軽い音から始まり、進むと「ゴー」「ガラガラ」、末期には「ガタガタ」と変わっていきます。

やっかいなのは、100km/h前後になるとロードノイズに埋もれて聞こえなくなること。高速道路では気にならず、一般道の60km/h付近でいちばん目立つ、という報告が複数ありました。タイヤが原因なら路面が変わると音も変わります。

左右と前後の見分け方

どちら側かは、ハンドルを切ったときの変化で見当がつきます。右にカーブすると左側のタイヤに荷重が乗るので、右旋回で音が大きくなれば左、左旋回で大きくなれば右のベアリングが怪しいという見方です。左右どちらに切っても音が変わらないなら、ベアリングではなくタイヤ側を疑う材料になります。

前後の判断は、同乗者に運転を頼んで後席で耳を澄ませるか、ジャッキアップしてタイヤを手で回すのが確実。回したときにゴロゴロと手に伝わる感触があれば、その輪で決まりです。タイヤの上下を持って揺らしてガタがあるかも見ておきたいところですが、横方向に揺らすとハンドルが動いて判断できないので、揺らす向きは上下に限ります。

似た音との見分け

音の出方 疑う場所
路面が変わると音も変わる タイヤ(ロードノイズ、偏摩耗)
エンジン回転数に合わせて変わる、停車中も鳴る エンジンや補機側(エンジン音がうるさい時の記事)
ハンドルを切ったときだけカラカラ鳴る ドライブシャフト
速度に比例し、路面に関係なく、カーブで左右差が出る ハブベアリング

エンジン回転数ではなく車速に連動するかどうかが、いちばん簡単な分かれ目になります。回転に合わせて唸る音についてはウィーン音の記事を、ベルト周りのベアリングが出す音はシャリシャリ音の記事を参照してください。

どうやったら直るか

直し方はベアリングの交換に限られ、調整やグリス補充で延命する方法はありません。ただし車種によって交換の仕組みが2通りあり、ここで費用の中身が逆転します。

圧入タイプとASSYタイプ

ワゴンRやノート、フィット、C25セレナのフロントなどはベアリング単体を圧入するタイプで、部品は3,000円台と安い反面、プレスで抜いて入れる手間がかかるため工賃が主役になります。ABSセンサー用の磁気シールが入っていて、向きを間違えると組み直しになる、神経を使う部品でもあるのです。

一方、タント、アクア、ノア80系、C26セレナのリアなどはハブごと交換するASSYタイプ。ボルト4〜5本で付け替えられるので作業は1時間前後と短く、部品代が1万2千〜1万8千円と高めになる代わりに工賃は抑えられます。リビルトや中古は基本的に出回っておらず、純正か社外新品(KOYO、NTNなど)の二択です。

片側だけ替えるか、両側か

見積もりは異音が出ている側だけで出てくることが多く、片側交換そのものは珍しくありません。ただ、同じ距離を走ってきた反対側も同じ年齢です。1輪ずつ3年連続で交換して「まとめて替えたほうが安かった」と振り返る整備記録もあり、次の車検までの距離と費用の積み上がりを見て決めることになります。

放置するとどうなるか

音の段階で止まっていれば、走行そのものは可能です。進行するとガタが出て、ABSセンサーの先端が削れて警告灯が点き、ベアリングとセンサーの両方を交換する事例が出てきます。さらに進めばブレーキの引きずりや焼き付き、整備工場が「走行中にタイヤが脱落するような事故につながる」と書くのはこの段階です。音が出てから数か月は猶予がある部位ですが、放置で安くなることは一度もありません。

直すにはこれくらいの費用がかかる

見積もり報告を並べると、片側で1万5千円から4万円弱、両側で4万〜6万円台に収まるものが大半でした。幅が出るのは、先ほどの圧入かASSYかという構造の差と、店の工賃単価の差です。

車種 箇所 店 金額(内訳)
ワゴンR MH23S リア片側(圧入) 整備工場 14,960円(部品3,600+工賃10,000)
タント L375S リア片側(ASSY) ディーラー系 31,460円(部品17,300+工賃11,300、税抜)
タント L375S リア左右・社外品 整備工場 45,650円
アクア 2015年式 リア 整備工場 35,000円(ディーラー参考40,000円)
ノート リア片側(圧入) 整備工場 39,110円(部品6,460+工賃32,650)
セレナ C26 約9.7万km 左リア(ASSY) 整備工場 31,988円
セレナ C25 フロント左右(圧入) 整備工場 61,540円(作業5時間半)
レガシィ B4 17万km フロント片側 ディーラー 38,874円(工賃17,765+部品21,109)
同じ車 フロント片側 カー用品店 32,285円(工賃12,320+部品19,965)

ノートの例が分かりやすく、部品は6千円台なのに工賃が3万円を超えています。圧入タイプは「部品が安いのに高い」と感じやすい構造で、見積書を見るときは部品と工賃を分けて眺めるのが近道。レガシィの例ではディーラーと量販店の差が約6,500円で、ほぼ工賃単価の差でした。

追加費用が出る場面

車検で指摘されて量販店に頼んだ例では、工賃7千円のほかに「インナーレースの固着除去」として1万1千円が加算されていました。古いベアリングの内輪がハブに貼り付いて外れない、という理由です。別の整備工場からは「本来は起きにくく、起きても30分の作業」という意見も出ており、見積もりに見慣れない項目があれば、何の作業かを一度聞いてみる価値があります。

同じ時期に順番が来る部品

ハブベアリングが鳴る距離は10万km前後、早い車で7〜8万kmが目安。同じ頃に寿命を迎えるのがショックアブソーバー(7〜10万km)、サスペンションのブッシュ類、CVTフルードやドライブシャフトブーツで、「ハブを直したら次はショック」と続いた整備記録もあります。1回の修理が3万円でも、ここから先は数万円の出費が間隔を詰めて並びやすい時期です。音が出た段階で、次に来る部品まで含めて整備工場に見てもらうと、修理の回数そのものを減らせます。