アイドリングや低回転がひどくぐずつくのに、3,000回転から上は普通に回ってブーストもかかる。あるいはある日突然、エンジンからカンカンと金属音がし始めた。インプレッサWRX STI(GC8・GDB・GRB・GVB)やレガシィのEJ20ターボで、こうした症状の先にあるのがピストンの棚落ち(リングランドの割れ)やメタルブローです。見つけ方と、オーバーホール・リビルト・中古エンジンの比較、57万円から200万円まで金額に幅が出る理由をまとめました。

棚落ちかどうかを確かめる

棚落ちは、初期のうちは気づきにくい故障です。ピストンの溝の間が欠けても、完全に崩れて異音が出るまでは「ほとんど分からない」とされています。あるショップのGDBは、低回転の不調に悩んだオーナーがアイドルの制御弁やエアフロー、コイルを自分で替えても直らず、車検で圧縮を測って初めて、1番がほぼ1、3番が0、実質2気筒で走っていたことが分かりました。中速から上が好調だったために、圧縮を疑うのが後回しになっていたのです。

症状 考えられる状態 確かめ方
チェックランプと特定の気筒の失火 まずは点火系(プラグ・コイル) プラグの電極欠けで直ったGRBの例あり
低回転の不調、オイル消費、白煙。高回転は普通 ピストンの棚落ち 圧縮測定
ある日突然のカンカン、コンコンという回転に合わせた打音 メタル(コンロッドベアリング)のブロー 音が出た時点で内部は損傷している
カリカリ、コツコツという加速時の音 異常燃焼(ノッキング) 聞き分けは慣れが要る

失火が出たからといって棚落ちとは限らず、プラグ4本の交換、16,500円で直ったGRBもありました。まず点火系、次に圧縮、という順番で見ていくのが無駄の少ない進め方です。メタルブローは、音が出た時点でもう内部が壊れていて、そのまま走るとコンロッドが折れてブロックを突き破り、エンジンが全損になるとショップは注意していました。メタルの打音についてはコンロッドメタルの記事にまとめています。

壊れる原因

棚落ちの原因として挙がるのは、燃料が薄い、点火時期が早い、ブーストのかけすぎ、ガソリンのオクタン価の低下、といった異常燃焼の条件です。高回転でタンクの燃料が偏ってガス欠のようになる、サーキット走行を繰り返す、タービンの限界を超えたブーストアップ、といった使い方での例もありました。GC8までのEJ20は過酷に使わなくても壊れる、街乗りでも10万km前後でのブロー事例が多い、とあるショップは書いていて、10万km前後でのオーバーホールを勧めています。GRBの初期型のピストンが弱いという話もありますが、メーカーの発表は見つかっていません。

どうやったら直るか

オーバーホールの範囲

直し方の中心はオーバーホールです。腰下を分解してピストンとリングを替え、シリンダーの傷の状態に応じて研磨やボーリングをする。ヘッドまで含めるフルオーバーホールなら、バルブまわりやウォーターポンプ、タイミングベルト類も一緒に新しくする内容。ショップによって、エンジンの脱着工賃や油脂が料金に含まれるかどうかが違うので、金額を比べるときはそこを揃える必要があります。

リビルトと中古エンジン

メーカーのリビルトエンジンは作られていないという回答があり、専門店のリビルトEJ207がGDB用で約105万円、GR・GV用で約119万円、換装工賃が約20万円でした。中古エンジンは安く済む反面、15万kmで壊れて10万km走行の中古に載せ替えた車が、半年後にブロックまで壊れて全損になった例が残っています。ディーラーでは、リビルトの在庫が無いとして修理を断られたGDBの例がある一方、EJ20のオーバーホールを受け付けている販売店もあり、対応は店によって分かれていました。

壊れ方で費用が変わる

金額を大きく左右するのは壊れ方です。棚落ちで済んでいれば部品の交換とボーリングで収まりますが、コンロッドが折れてブロックやヘッド、クランクまで使えなくなると、新品部品だけで50万円以上が追加になるとショップは書いていました。35万kmのGRBでは、ヘッドの4気筒すべてにひび。異音が出たら走らせずに止めることが、修理代を抑える一番の手段です。EJ20のスバル車で棚落ちやブローを対象にしたリコールや保証延長は見つかりませんでした。

直すにはこれくらいの費用がかかる

内容 店 金額
GDB・GRB・GVB オーバーホール(純正ピストン、脱着・油脂込み) ショップ 570,000円
GR・GV・VAB EJ207 オーバーホール(基本価格) ショップ 616,000円。メタルトラブルは+6万〜16万円
EJ20 オーバーホール(鍛造ピストン、ボーリング、ヘッドOH) ショップ 700,000円(脱着・油脂は別)
GC8 WRX オーバーホール+補機・周辺部品(40日) — 総額93万円
GDB用 リビルトEJ207+換装 専門店 約105万円+198,000円
GRB 12万km超 街乗りで突然ブロー、腰下とヘッドのOH エンジン専門店 基本約100万円
GRB 35万km メタルブロー、鍛造ピストン・ブロック・ヘッド・クランク交換ほか 専門工場 総額約200万円(基本工事約150万円)

ブロックが無事な棚落ちなら、脱着込みで57万円から、エンジン本体のオーバーホールで60万〜70万円台が中心です。リビルトへの載せ替えは125万円前後、ブロックまで壊れた場合は150万〜200万円と、壊れ方で費用は倍以上変わります。ディーラーで99万円や93万円という話も出ていますが、内訳は確認できていません。直すかどうかは、この金額と車の値段、そしてあと何年乗るかの比較になります。STIのようなスポーツモデルは直して長く乗るオーナーが多く、35万kmで3回目のオーバーホールを考えている例もありました。

同じ時期に重なるもの

エンジンを降ろすほどの修理になると、周りの部品もまとめて替える時期と重なります。タービン(ブローと一緒に壊れた例も)、クラッチ、ウォーターポンプ、タイミングベルトとテンショナー、ラジエーター、ゴムホースやセンサー類。オーバーホールのついでにクラッチやタービンを替えておけば、次に降ろす理由を一つ減らせます。見積もりの段階で、どこまでを同時にやるかを決めておくのが、総額を読み違えないコツでしょう。EJ20のオイル漏れやヘッドガスケットについてはレガシィ・フォレスターのオイル漏れの記事、輸入車の棚落ちはVW 1.4TSIの記事で扱っています。