Dに入れても数秒、長いと30秒ほどつながらず、メーターのDランプが点滅。走行中に警告音が鳴り、変速しなくなって回転だけが上がっていく。アルファロメオ ジュリエッタ(940、2012年〜)やミト(MiTo)のTCT(乾式のデュアルクラッチ)では、こうした症状で走れなくなる例が少なくありません。「TCTが壊れたら本体交換で高額」というイメージがありますが、集まった修理記録の多くは、油圧ポンプまわりの電気系や、バッテリー電圧の不足が原因でした。症状からの切り分けと、実際の修理代をまとめました。

どこが原因かを確かめる

TCTは、電動の油圧ポンプで作った圧力を使ってクラッチとギアを動かす仕組みです。そのため、ポンプやその制御、配線、電源が弱ると、ミッション本体が無事でもギアが入らなくなります。修理記録で見られた症状と原因は次のとおりです。

症状 見つかった原因
警告灯が点き、DやRに入れてもNに戻される。走行不能 電動ポンプの回路、ミッションの制御ユニット(SDU)
走行中に警告音、変速しなくなる 電動ポンプの回路の故障(アキュムレーターと一体で交換)
キーONでポンプの作動音がしない、ギアが入らない ポンプのコネクターの抜け(ロック爪の劣化)
ポンプが回りっぱなしで苦しそうな音 油圧の異常(正常は55barで停止、70bar超)
2・4・6速しか入らず、Rにも入らない 奇数段側のアクチュエーター
冷えているときにガクガク、勝手にシフトダウン アクチュエーターのオイル不足、フルードの劣化と学習のずれ
警告が多発する バッテリー電圧の不足(12.2V以上が必要)、指定外のバッテリー、ヒューズ切れ

2・4・6速だけ入るなら奇数段側(1・3・5・R)、と系統で絞れるのは、デュアルクラッチならではの手がかりです。シフトレバー側の位置センサーの不良でも、ミッションの警告灯が出た例がありました。バッテリーは低下に敏感で、12.1Vでエラーが多発し、EFBという指定の種類以外を付けてもTCTのエラーが出ると整備工場は書いています。バッテリーを逆につないでヒューズが飛び、パワステとTCTの警告が連鎖した例もありました。

クラッチの摩耗

本当にクラッチが減っている例もあり、週末の短距離中心で15,500kmの2012年式が滑り出した記録があります。ストップ&ゴーの多い市街地ほどクラッチの摩耗が進むとメーカーは説明していて、クラッチは保証でも消耗品の扱いでした。保証期間内に、ミッションのユニットを替えても改善せず、奇数側のクラッチまで交換して無償で直った例もあります。

ほかに、下回りにオイルが広がっていたミトはTCTのフルードタンクの取付部のOリングの劣化、Pに入れても動いてカチカチ鳴った車はパーキング機構のワイヤー調整の不良でした。ディーラーで診断機に記録が残らず様子見と言われ、そのあと別の症状が出た例もあります。症状が出た日時や状況、表示された警告をメモしておくと、記録が残りにくい不具合でも整備士に伝えやすくなるでしょう。

どうやったら直るか

まず電源とポンプを見る

最初に確かめたいのは、バッテリーの電圧とヒューズ、ポンプのコネクター。コネクターの差し直しで直った例があるほか、制御のパワートランジスタだけを替えて直した整備工場もありました。ミトでは油圧ポンプの新品が国内に無く、1万2千kmの中古品で対応した例も残っています。ギクシャクする程度なら、ミッションオイルとアクチュエーターのフルードを替えて、診断機でキャリブレーション(学習のやり直し)をすると改善することがあり、オイル交換だけでは意味が無く学習とセットだと整備工場は強調していました。

クラッチやアクチュエーターの交換

シフトのアクチュエーターは、ミッションを降ろさずに交換できる例がありました。クラッチの交換はミッションの脱着が必要で、サブフレームを下ろす作業になります。ミトでは専用工具でフライホイールをリセットしないと、クラッチを替えても動かないという注意がありました。国内でTCTのリビルト品が流通している情報は見つかっていません。放置すると、走行不能のまま置いてバッテリーが上がる、オイルが無くなってシリンダーが焼き付く、といった二次被害の例があります。

TCT本体のリコールやサービスキャンペーンは見つかりませんでした。ABA-940141では、パーキングのアクチュエーターに給脂されていないものがありPから動かせなくなるおそれがあるとして、2016年6月に改善対策が通知されたとされています(公式のページは未確認)。

直すにはこれくらいの費用がかかる

車種 内容 店 金額
ジュリエッタ アクチュエーターオイルの補充 DIY 約2,700円
ジュリエッタ 1.4 TCT TCTオイル(キャリブレーション込み)+ミッションオイル 整備工場 26,950円
ミト アキュムレーター付きASSYの提示(実施せず) ディーラー価格 216,000円
ジュリエッタ 8年目 5.6万km 電動ポンプ回路故障、アキュムレーター付きASSY交換(9日入院) ディーラー 268,337円
ジュリエッタ 限定車 TCTユニット+奇数側クラッチ交換 ディーラー(保証) 0円

オイル交換と学習なら3万円弱、ポンプ回路のASSY交換はディーラーで27万円前後。民間の工場は、トランジスタやコネクター、Oリング、中古ポンプといった部品単位で直す例があり、整備工場の多くは金額を公開していませんでした。「ディーラーで100万円コース」「クラッチ10万〜15万円、一式30万〜40万円」という数字はまとめサイトの使い回しで、実際の請求の例は見つかっていません。アルファロメオに慣れた専門店に、まず電気系から見てもらうのが無駄の少ない進め方でしょう。

同じ時期に重なるもの

TCTの不調が出る年数のジュリエッタは、バッテリー(EFB指定)、シフトレバーの位置センサー、1.4ターボのマルチエアユニット(部品で13万〜17万円という話)、油圧のスイッチやセンサー、内側のドアハンドルの折れ、エアコンのコンプレッサーと、ほかの持病も並んでいます。TCTを直した翌年にマルチエア、という重なり方も考えられるので、見積もりのときに他の記録も読んでもらうと安心です。同じデュアルクラッチの悩みはVWのDSGの記事やボルボV40の記事でも扱いました。