朝いちばん、ベンツのエンジンをかけた直後にガラガラ、ガチャガチャと音がする。セルを回す時間も長くなり、エンジン警告灯が点いた。W204のCクラスやW212のEクラスなど、4気筒のベンツで知られているカムアジャスターの故障です。一方、「カムアジャスター」と呼ばれる部品には、カムの先に付く本体と、その動きを制御するマグネット(ソレノイド)があり、マグネットからのオイル漏れはまったく別の故障でした。費用も1桁違うほど。見分け方と、リコールの対象、修理代をまとめます。
本体の故障か、マグネットの漏れかを確かめる
| 故障 | 症状 |
|---|---|
| カムアジャスター本体(カムの先の油圧の部品) | 朝いちの始動直後のガラガラ音、クランキングが長い、警告灯。走りの不調は感じないことが多い |
| カムアジャスターのマグネット(ソレノイド) | 異音はない。ヘッドの前のマグネットのコネクターがオイルでにじむ。外すと端子にオイル |
| カムポジションセンサー | 警告灯は点くが、始動時のガラガラ音は出ない |
センサーが悪いだけなら始動時のガラガラ音は出ない、この音はタイミングの部品の故障を示す、と整備工場は書いていました。コードだけを見てセンサーを替えても直らない、ということです。整備士は、クランクを上死点に合わせ、カムのプーリーの合わせマークを見て、外側が合っていても内側がずれていれば中のロックピンが摩耗している、と判断していました。SLK200(R172)では、2,000〜2,500回転あたりで断続的に音が出た例もあります。
マグネットの漏れはECUまで届く
マグネットから漏れたオイルは、毛細管現象でハーネスの中を伝い、エンジンのコンピューター(ECU)のコネクターまで届くことがあります。ひどい場合はECUが壊れる、と複数の整備工場が注意していました。漏れがECUまで及んで修理に40万〜50万円かかったという話もあります(個人の伝聞)。マグネットのコネクターを外してオイルがにじんでいれば、漏れはもう始まっているとのこと。W203、R170、R171、W204、W205、W212など、古い世代から続く定番の弱点でした。
エンジンで違う直り方
M271はアジャスターの交換で直ります。M274(W212など)では、吸気のカムの先のプレートがずれる故障があり、溶接せずに直したら半年で再発したため、今はカムとプレートを溶接してから交換している、と書く整備工場がありました。V6のM276とV8のM278は、ずれるとカムシャフトの交換まで必要になるそうです。
どうやったら直るか
マグネットと対策ハーネス
マグネットは外からボルトで留まっていて、短い時間で交換できます。R171では工賃12,000円・2時間でした。漏れがハーネスを伝わないようにする対策ハーネスを同時に付けるのが定番で、W205にも付けた例がありました。予防として、マグネットのコネクターを時々外してにじみを見ておくと安心でしょう。
本体の交換
本体の交換は、フロントのケースを外し、専用の工具でカムを固定してタイミングを合わせ直す作業です。チェーンのテンショナーは再利用できないので同時に替え、4気筒は吸気と排気の2個。作業後にはコンピューターの設定の更新も必要で、専用工具と経験がないとできない、と複数の店が強調していました。チェーンが伸びていれば、チェーン、ガイド、ヘッドカバーのガスケットまで一緒に替えます。部品屋が吸気用を排気用として出してきて、組んだら排気側のカムが逆に動いた、という失敗談もありました。放置すれば出力の低下や燃費の悪化、最後はエンジンの故障につながると整備工場は書いています。
リコールの対象
2019年9月、メルセデス・ベンツ日本は油圧カムシャフトアジャスターのリコールを届け出ています(公式ページと届出の一覧表で確認)。ロックの部分の材質が不適切で摩耗し、始動時に異音が出る、最悪の場合は警告灯が点いて排ガスが規制値を超えるおそれがある、という内容で、本体を対策品に交換します。対象はM271 EVO(CGI)を積む、W204のC180・C200CGI・C250CGI、W212のE250CGI、C207のE250CGIクーペ、R172のSLK200の13型式・38,445台(2009年8月〜2012年11月輸入)。M274・M270・M272は対象外で、マグネットの漏れも対象ではありません。済んだ車には、運転席ドアの開口部に「外No.2872」のステッカーが貼られています。通知はダイレクトメールだけなので、中古で買った人は車台番号でディーラーに照会したいところです。リコール済みでもチェーン類は元の部品のままで、あとから音が出た例もありました。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| R171 SLK200K 2010年式 | マグネット2個39,320円+対策ハーネス2本14,660円+工賃12,000円ほか | 整備工場 | 76,714円 |
| W212 E250 | 本体+チェーンテンショナー+ヘッドカバーのガスケット+オイル | ベンツ専門の整備工場 | 約20万円(ディーラーは30万円超) |
| W203 C180 2001年式 | カムアジャスターの修理 | — | 22万円 |
| 4気筒(相場) | 本体交換 | ディーラー(民間店が書いた相場) | 30万〜60万円以上 |
マグネットなら対策ハーネス込みで7万円台、本体の交換は民間で約20万円、ディーラーでは30万円を超え、チェーンまで替えると60万円以上という相場も。民間の専門店はディーラーのおよそ3分の2から半額以下でした。作業の一覧に「カムアジャスター」と書かれていても、1個あたり7,000〜1万円ならマグネットのことが多いので、見積もりではどちらの交換かを確かめたいところです。M274・M270の本体交換の金額は見つかっていません。
同じ時期に重なるもの
カムアジャスターを替える時期のベンツは、タイミングチェーンとテンショナー、カムポジションセンサー、ヘッドカバーのガスケット、オイルフィルターのハウジング、クランクケースの換気のバルブ、サーモスタット、イグニッションコイルと、エンジンまわりの手入れが重なってきます。サーモスタットはベンツのサーモスタットの記事、始動時の音全般は始動時のガラガラ音の記事にまとめました。