走行中にメーターの水温警告が黄色から赤に変わり、「冷却水の温度が高くなっています」と表示された。出力が絞られて、時速60kmほどしか出ない。BMWの3シリーズ(E90・F30)やX1、5シリーズでのオーバーヒートは、前兆なく止まる電動ウォーターポンプや、樹脂でできた冷却系の部品の割れが原因になることが多い故障です。2025年にはウォーターポンプのコネクターのリコールも届け出られています。エンジンごとの弱点と、ファンが止まらない症状の見分け方、交換費用をまとめました。
何が起きているかを確かめる
水温の警告は黄色が冷却水の不足、赤が高水温を示し、赤では出力が制限されると解説されています。電動ウォーターポンプが壊れたときの特徴は、前兆がほとんど無く突然止まること。「前兆は全く無く突然オーバーヒートした」という体験談もあり、診断機にはポンプのロックなどのコードが残ります。エンジン側は高温なのにラジエーター側は冷たい、つまり冷却水が回っていない状態で、警告は115℃前後で出ていました。
| 症状 | 疑わしい原因 |
|---|---|
| 前兆なく水温が赤、出力制限。ポンプのコードが残る | 電動ウォーターポンプの停止(N52・N54・N55・N20など) |
| 駐車場に青緑の液、甘い匂い、冷却水レベル警告が繰り返し出る | 樹脂ハウジングのポンプの割れ(N13)、ラジエーターの樹脂タンク、ホース、エクスパンションタンク |
| 水温が上がらない、暖房が効かない | サーモスタットの開きっぱなし |
| エンジン下部のオイルと冷却水のにじみ | オイルフィルターハウジングのガスケット |
「BMWは電動ウォーターポンプ」と一括りにされがちですが、エンジンで方式が違います。N52(E90の323i・325i、E60の525i)やN54・N55、N20(F30の320i、E84のX1)は電動、N46(E87の118i・120i、E90の320i)はベルトで回す機械式が基本。F20の116iに積まれたN13では、樹脂のハウジングのポンプが7万〜10万kmで割れる事例が専門店に多く集まっていました。
ファンが止まらない3つのケース
「ファンが止まらない」という相談は、3つに分かれます。一つ目は、電動ポンプが壊れたのをコンピューターが補おうとして、ファンを全開で回しているケース。二つ目は、ファンモーター自体の故障で、朝からファンが全開で回っていたのにポンプのコードは無く、原因はファンモーターだったE91の例がありました。三つ目は、エンジンを止めたあとにしばらく回る正常な動きで、ディーゼルはDPFを冷やす分も長めに回ります。
注意したいのは止め方です。一般的なオーバーヒートの対処として「エンジンをかけたまま冷やす」と言われますが、電動ポンプが止まっていれば冷却水が回らないので、それが当てはまらない可能性があります。整備士の見解として裏付けた資料は見つからなかったものの、赤い警告が出たら安全な場所に止めて、ロードサービスに相談するのが無難でしょう。
どうやったら直るか
ポンプとサーモは同時に
電動ウォーターポンプは、サーモスタット(N52はハウジングごと)と同時に替えるのが定番です。取り外しの工程が同じなので、別々に替えると工賃が二重にかかります。電動ポンプは10万km前後で交換が多く、早い例では335iが5年3万kmで止まっていました。部品は純正のほか、PierburgやVDOといった純正相当品があり、F30用で純正約12万円に対して4万円ほど。交換後のエア抜きは診断機で行う必要があり、手作業では抜けきらずに部分的なオーバーヒートを起こすと専門店は書いていました。自分で替えた人の記録では、上側のボルト1本に約1時間、2日がかりの作業です。
2025年のリコール
2025年6月、ウォーターポンプのコネクターのリコールが届け出られました。インテークパイプのシールから漏れたブローバイの凝縮液がポンプのコネクターに垂れ、端子が腐食してショートし、過熱から火災に至るおそれがあるという内容です。対象は2011年8月〜2018年6月製作の320i、328i、428i、523i、528i、X1(E84の20i・28i)、X3、X4、X5 xDrive40e、Z4 sDrive20iなど18車種、約2.1万台とされています。対策はシールの点検と交換、コネクターの清掃か、ポンプ本体やハーネス側のコネクターの交換。対象なら無償なので、修理の見積もりを取る前に車台番号で照会したいところです。N52の電動ポンプについての保証延長は見つかりませんでした。
放置するとどうなるか
オーバーヒートを起こしたまま走ると、ヘッドガスケットの交換で40万〜60万円、エンジンの載せ替えで100万円以上という専門店の目安が出ています。オイルフィルターハウジングからの漏れも、進むと冷却水側に及び、オイルと冷却水が混ざることもあるとされていました。オイル漏れの話はBMWのオイル漏れの記事にまとめています。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| F30 320i H25 | 純正相当のポンプを持ち込み(部品4万円) | 整備工場 | 工賃27,500円 |
| F20 116i | 樹脂ハウジングのポンプ交換 | 輸入車専門店 | 約55,000円 |
| E90 325i H20 | ラジエーター交換 | 整備工場 | 115,720円(ラジエーター77,000円) |
| E91 325i H19 | 電動ポンプ+サーモ+ホース | 整備工場 | 174,163円(工賃28,000円) |
| E91 325i 10万km | 純正ポンプ+サーモ(予防交換) | 輸入車専門店 | 約185,000円 |
| F30 320i H26 | ポンプ+サーモ+冷却水+診断 | 整備工場 | 190,608円 |
| E90 335i 3万km | オーバーヒート後の修理 | ディーラー | 総額21万円(ポンプ11万円) |
| 320i 7.5万km | 冷却水漏れ(インマニ脱着を含む) | ディーラー | 22万円 |
電動ポンプとサーモの同時交換は、民間で純正や優良品を使うと17万〜19万円、純正相当品を持ち込めば部品4万円と工賃3万円前後。ディーラーは15万〜20万円以上という比較が出ていて、自分で替えれば5万円ほどでした。ラジエーターなら11万円台、樹脂ポンプのN13は5万円台と、エンジンと壊れた部品で金額は大きく変わります。リコールの対象かどうか、どの部品が壊れたのかを確かめてから見積もりを比べるのが、出費を抑える近道でしょう。
同じ時期に重なるもの
冷却系が傷む10万km前後のBMWは、サーモスタット、ホースとクイックカプラー(外すときに折れやすい)、エクスパンションタンク、ラジエーターの樹脂タンク、ファンモーター、そしてオイルフィルターハウジングのガスケットと、樹脂とゴムの部品が一斉に寿命を迎えます。ポンプを替えた翌年にラジエーター、その次にオイル漏れ、と続けば合計は40万円を超えることも。冷却系をまとめて替えるか、壊れたところから直すかは、あと何年乗るかで決めるのが現実的です。オーバーヒートの一般的な対処はオーバーヒートの記事、ラジエーターの費用はラジエーター交換費用の記事にまとめました。