エンジンを切った瞬間に「キュッ」と鳴る。そのうちアイドリング中にもガラガラと音がし始め、点検でウォーターポンプの交換を勧められた。タント(L375S・LA600S)やムーヴ(L175S・LA100S)、ハイゼットといったKFエンジンのダイハツ車では、5万〜10万kmあたりでよく聞く話です。音の段階と見分け方、交換しなくてよいにじみの線引き、車種ごとの実際の費用をまとめました。
ポンプが原因かを確かめる
整備工場の説明では、ダイハツのウォーターポンプは段階を踏んで悪くなります。最初はエンジン停止時の「キュー」、次にアイドリングでのガラガラ、最後はベアリングが壊れてプーリーが外れる、という順番。鈴虫のような音、キーンという音だったという記録もあり、音の表現は人によってさまざまでした。
| 音・見た目 | 考えられる場所 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 高い「キュルキュル」。雨の日や始動直後に強い | ベルトの滑り | ベルトに鳴き止め剤を吹いて音が変わるか |
| エンジン停止時の「キュッ」、アイドリングの「ガラガラ」「ゴロゴロ」 | ウォーターポンプのベアリング | ベルトを外して音が消えるか、プーリーを手で回して重さやガタを見る |
| ポンプの下にピンクの粉 | 冷却水のにじみが乾いた跡 | 回転中に冷却水が滴り続けるか |
| 冷却水が減る、水温計が上がる | ポンプやホースからの漏れ、サーモスタット | 漏れの場所を特定する |
ベルトの鳴きとポンプの音は似ていて、整備工場でもベルトを外してから一つずつプーリーを回して確かめるのが普通の手順です。ベルト鳴きの話はワゴンRのベルト鳴きの記事で扱いました。
交換しなくていいにじみ
ポンプはエンジン本体に付いていて熱いので、漏れた冷却水はすぐ蒸発し、ピンクの成分だけが粉になって残ります。ここで知っておきたいのが、ダイハツ自身の整備向け資料の内容。ポンプの小さな穴からのにじみや固形物の付着は「機能上問題なし」とされ、交換が必要なのは冷却水が滴り続ける、ガタがある、異音がある場合だと整備工場が紹介していました。粉が付いているだけで交換を勧められたなら、滴っているかどうかを聞いてみる価値があります。逆に、音が出ていても水は漏れていない、というポンプもあるそうです。
どうやったら直るか
プーリーとベルトも一緒に
直し方はポンプの交換で、冷却水の入れ替えとエア抜きが付いてきます。L375Sではポンプがエンジン右側、ファンベルトとクーラーベルトの奥にあり、右前のタイヤを外して作業する場所。Oリングとガスケットは新品にします。注意したいのはプーリー。対策品のポンプは軸が太くなり、プーリーの穴の径も変わったため、プーリーも一緒に替える例がほとんどでした。純正のプーリーは2,750円前後。ベルトも同時に替えると5,000〜6,000円ほど上乗せになりますが、ベルトを外す作業は同じなので、まとめるほうが工賃の無駄がありません。
原因はベルトの張り過ぎ
見落とされがちなのが、ベルトの張り具合。ダイハツの資料には、ベルトの張力が高いと軸受けがわずかに動き、アイドリングや停止時に異音が出ると書かれていて、整備工場は「ベルト交換のときに感覚で張る」ことを主な原因に挙げています。ポンプを替えたあと、ベルトを強く張りすぎれば同じことが起きかねない。交換を頼むときは、張力を測って合わせてくれるかを確認しておくと安心でしょう。
放置するとどうなるか
軸のガタが進むと冷却水が漏れ出し、オーバーヒートまで進んだタントの例があります。LA600Sではプーリーが外れて走れなくなった記録もありました。オーバーヒートでヘッドが歪めば、ポンプの数万円では済まず、エンジン載せ替えの相談になります。その流れはオーバーヒートの記事にまとめました。
保証延長は、L175Sムーヴの一部(H19年8月〜H20年12月製作)で7年10万kmに延びた例が伝えられていますが、ダイハツの公式発表は確認できず、期間もすでに過ぎています。「タント ウォーターポンプ リコール」で出てくるのは屋根の部品や座席のボルトの別件で、ウォーターポンプのリコールは見つかりませんでした。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| タント L375S H25 | ポンプ交換 | 整備工場 | 25,704円(ポンプ9,500+工賃9,000+冷却水2,000ほか) |
| タント LA600S H27 | ポンプ+プーリー | 整備工場 | 26,345円(工賃12,000+ポンプ8,700+プーリー2,750) |
| タント LA600S 10万km | ポンプ+ベルト2本 | 整備工場 | 25,999円(工賃9,849+部品16,150) |
| ムーヴ L175S H20 | ポンプ+プーリー | 整備工場 | 27,000円(工賃10,500+ポンプ8,550+プーリー2,750ほか) |
| タント 5年6万km | ポンプ交換 | ディーラー | 約35,000円 |
| ハイゼットトラック S500P H27 | ポンプ交換(4時間) | 整備工場 | 31,625円(工賃16,250) |
| ハイゼットカーゴ | ポンプ+プーリー+サーモスタット(5時間) | 整備工場 | 51,018円(工賃32,000) |
タントやムーヴは民間の整備工場で2.5万〜2.7万円、ディーラーで3.5万円前後。部品はどこでも1万円強なので、差はほぼ工賃です。部品を持ち込んで作業だけ頼み、16,500円で済ませたL175Sの記録もありました。ハイゼットが高いのは、ポンプが運転席の下、オルタネーターの真下にあり、座席側から4〜5時間かけて作業するため。工賃だけでタントの2倍前後になりました。社外品のポンプは純正の半額ほどで、アイシン製を6,800円で付けた例もあります。古いEFエンジンのハイゼットやムーヴ(S200系・L150Sなど)はポンプがタイミングベルトで回る構造で、ベルト交換と同時になるため費用の組み立てが別物です。
同じ時期に重なるもの
ポンプの音が出る5万〜10万kmは、KFのほかの持病も近づく時期です。ファンベルトとクーラーベルト、サーモスタット、L375Sではラジエーターを一緒に替えた記録があり、そちらまで含めると10万円近くになっていました。初期のKFならオイル消費も気にかかるところ。ポンプだけ替えて翌年にラジエーター、その次にオイル消費の修理と続くと、累計は小さくありません。ポンプ交換の見積もりを取るときに、ベルトとサーモスタット、ラジエーターの状態も一緒に見てもらうと、次の出費の時期が読めます。