オイル交換から2,000kmも走らないうちに、ゲージの先にオイルが付かなくなっていた。漏れた跡はどこにも無い。タント(L375S)やムーヴ(L175S)、ミラ、ムーヴコンテなど、ダイハツのKFエンジンを積んだ軽では、この減り方が持病として知られています。どの年式で起きやすいのか、オイル管理で乗り続けられるのはどこまでか、ピストン交換と載せ替えにどれくらいかかるのかを、整備の実例から整理しました。
オイルの減り方を確かめる
KFのオイル消費は、外へ漏れるのではなく燃焼室で燃えてしまう「オイル上がり」です。燃費を良くするためにピストンリングの張力を弱めに設計したところ、リングの溝にスラッジやカーボンが溜まり、オイルをかき落とすオイルリングが固着してしまう。整備工場が分解した記録では、溝のカーボンは灯油に3日漬けても落ちないほど固まっていました。買い物や送り迎えのような短距離・低速の使い方の車ほど、溜まりやすいと説明されています。
| 減り方 | 見られた例 | 考えられる状態 |
|---|---|---|
| 5,000kmで0.5L前後 | 修理後に正常になった車で3,400km・0.3L | ほぼ正常の範囲 |
| 3,000kmで2L前後 | H24 タントカスタム ターボ | オイルリングの固着が進んでいる |
| 1,000kmで1L | エッセ、ムーヴ L175S、タントエグゼ | 2,000km前後でオイルが尽きる段階 |
KFのオイル量は3L弱。1,000kmで1L減る車は、交換から2,000kmあたりで下限を割る計算になります。ほかに思い当たる点として、マフラーからの青白い煙とオイルの焼ける匂いがあれば、燃焼室でオイルが燃えている合図でしょう。ただ、KF特有の煙の出方を整備士が説明した資料は見当たらず、煙が出ないまま減っている車も多いようでした。駐車場にシミが無い、エンジンの下側も乾いている、それでも減る。この組み合わせなら、オイル上がりを疑う順番です。減り方の違いはオイル上がり・オイル下がりの記事にまとめています。
対策前か対策後か
資料によって「対策済み」の時期が違うのは、段階的に変更されたため。2010年2月以降の生産分でピストンリングが対策品に変わり、2013年7月以降でオイルリング溝の穴の数と径を見直し、ブロックにオイルジェットを足した最終仕様になった、と整備工場は説明しています。問題の中心は2007年末から2010年1月の製造分ですが、H23〜24年式でも減ったという報告はあり、2010年以降なら安心とまでは言えません。走行距離では9万kmを過ぎたあたりから減り始めた例が多く、修理の記録は7万8千km〜14万kmに集まっていました。
どうやったら直るか
オイル管理で乗る
減り方が緩やかなうちは、交換の間隔を3,000〜4,000kmに縮め、給油のたびにゲージを見て継ぎ足す乗り方で持たせている人が大半です。整備士からは「3,000km交換ならまだいいが、5,000km交換だと減りに追いつかず、異音が出てから入庫するパターンが多い」という声もありました。高粘度のオイルやリングの固着をほぐす添加剤で減りが落ち着いた例はあるものの、変化が無かった例も同じくらい見られます。固まったカーボンは薬剤では溶けないので、効いても応急処置という位置づけでした。
ピストンとリングを替える
根本的に直すには、対策品のピストンとリングに交換するしかありません。エンジンを車に載せたまま交換できた例もあり、L175Sのムーヴでは交換後1万7千kmを走ってもオイル消費は正常でした。同時にバルブのステムシールやウォーターポンプ、タイミングチェーンを替えておく整備工場が多く、次にエンジンを開ける理由をまとめて減らす考え方です。最終仕様のショートブロック(ピストン入りのシリンダーブロック)ごと替える方法もあります。
載せ替えと、手遅れになったとき
オイル不足のまま走り、カラカラという打音が出たエンジンは、ピストン交換では済まずシリンダーごとの交換か載せ替えになります。中古エンジンは安く手に入る反面、対策前のエンジンが載ってくるおそれがあり、「中古よりリビルトを」とディーラーに言われた記録もありました。打音の話はコンロッドメタルの記事にあります。
保証延長は、すでに過去のものになっています。ダイハツは特別保証の6年10万kmを8年10万kmに延ばし、ピストンやリング一式を無償で交換していました。最終の製造車でも8年を過ぎた現在では、事実上どの車も対象外。リコールは出ていません。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| ミラ L275S | ピストンキット交換 | 整備工場 | 165,888円(工賃90,000+ピストンキット40,800+ガスケット類16,100+油脂6,700)。保証延長で無償 |
| ハイゼットカーゴ S321V H23 ターボ | 対策ピストン・チェーン交換 | 整備工場 | 165,000円 |
| ムーヴカスタム L175S 14万km | ピストン・ヘッドガスケット・チェーン・ウォーターポンプ等 | 整備工場 | 約18万円 |
| KF 各車 | ショートブロック交換 | 整備工場の料金表 | 20万円〜(税別) |
| ムーヴ L175S H19 | 中古エンジン載せ替え | 整備工場 | 170,000円(エンジン65,000+工賃82,400+油脂7,364) |
| タント L375S H22 11万km | 高速でエンスト、リビルトエンジン載せ替え | 整備工場 | 456,445円(部品414,950円、うちエンジン本体265,000円) |
ピストン交換で直すなら15万〜18万円、中古エンジンなら17万円前後。どちらも同じ価格帯ですが、中古は対策前のエンジンを引くかもしれないという違いがあります。オイルが尽きて壊れてからリビルトに替えると45万円台まで跳ね上がり、ピストン交換のほぼ3倍になりました。ディーラーの見積もりは「ピストンキット交換で13万〜17万円程度」という報告があるものの、内訳の分かる見積書は見つかっていません。減り方が1,000kmで1Lに近づいた時点が、修理するか、あと何年乗るかを決める区切りになるでしょう。
同じ時期に重なるもの
オイル消費が目立つ9万〜14万kmは、KFのほかの持病が順番に来る時期とも重なります。ガラガラ音を出すウォーターポンプ、3本まとめて替えることの多いイグニッションコイル、CVT、O2センサー、エンジンマウント。オイル消費を直したのに翌年ウォーターポンプ、その次にCVT、と続くと合計は小さくありません。ピストン交換を頼むなら、ウォーターポンプやチェーンをその場で替えて工賃の重複を避けておく。そこまでの総額を見積もりで出してもらってから、修理するかどうかを決めても遅くないはずです。オイルの減りとピストンリングの関係はピストンリングの記事でも触れています。