ボンネットのあたりから湯気が上がり、ボコボコという音がして水温の警告灯が点いた。サブタンクの冷却水があふれ、足しても足しても減っていく。エブリイ(DA64V・DA64W・DA62)で多いこの症状は、ヘッドガスケットが抜けたと心配されがちですが、整備記録の定番は運転席と助手席の間に隠れた「もう一つのキャップ」でした。症状ごとの原因の順番と、1.5万円前後で済む修理から15万円を超える修理までの費用をまとめました。
症状から原因を絞る
エブリイはエンジンが座席の下にあるキャブオーバー型で、冷却水のキャップがラジエーター側とエンジン側の2か所にあります。エンジン側のキャップ(サーモキャップ)は運転席と助手席の間、センターコンソールの下に隠れていて見落とされやすく、プラスチック製で年数とともに割れたり、中のパッキンが固着したりする部品。弁が閉じたままになると圧力の逃げ場がなくなり、冷却水がサブタンクへ逆流してあふれる、という仕組みです。整備工場は「スズキあるある」「定番の弱点」と書いていました。
| 症状 | 疑わしい原因 |
|---|---|
| サブタンクから吹き出す・あふれる、ボコボコ音、前のほうから水が垂れる | エンジン側のサーモキャップ、サーモスタット、ハウジング |
| ヒーターがぬるい、水温の上がりが遅い | サーモスタットの開きっぱなし |
| 水温警告灯が点く。ヒーターを入れると消える | サーモスタットの閉じたままの固着、キャップの劣化 |
| アイドリング中に沸騰する | ラジエーターキャップのパッキンのひび |
| 下回りが濡れている、ガラガラ音 | ウォーターポンプの漏れ・ベアリング |
| 下に漏れが無いのに冷却水が減る(100kmで2Lなど) | ヘッドガスケット抜け(K6A) |
大事なのは、吹き返したからといってすぐにヘッドガスケットと決めないこと。ある整備工場は最初ヘッドガスケットを疑いましたが、冷却水に排気ガスが混じっていないかを調べる検査で0.00%と出て否定し、原因はサーモのハウジングでした。冷却水を自分で替えた数日後に警告灯が点滅し、サーモスタットとキャップの交換で直った例もあります。エア噛みや、外したついでに劣化した部品が引き金になることもあるようです。
エンジンの型式で傾向が違う
K6Aのヘッドガスケット抜けは、DA64やDA62の話です。2015年以降のDA17(R06Aエンジン)で見つかった事例は、ラジエーターの樹脂タンク、ホース、ヒーターのジョイント、エア抜きボルトのパッキンなど、すべて漏れの系統でした。軽い接触事故でラジエーターが割れたのに気づかず、オーバーヒートしたDA17Vの例もあります。サーモまわりの不調は10万kmを超えた車が中心です。
白い煙にも2種類あります。ボンネットのあたりから上がるのは冷却水の湯気で、キャップやホースから噴いているサイン。マフラーから白煙が出続けるなら、冷却水が燃焼室で燃えている可能性があり、ヘッドガスケットを疑う段階です。どちらか分からないまま冷却水を足して走り続けるのが、いちばん高くつく使い方だと言えます。水温計が上がり始めたら、エアコンを切って暖房を最大にし、安全な場所で止めて冷ましてから点検を頼むのが基本です。
どうやったら直るか
サーモ3点交換とキャップ
定番の直し方は、サーモキャップ、サーモスタット、ハウジングの3点をまとめて替え、エア抜きをすることです。キャップは2つとも交換する工場が多く、ラジエーターキャップは年1回替えたいと勧める店もありました。エブリイのエア抜きは、エア抜きボルトを使う手順が必要で、冷却水を足すだけでは空気が残って再発します。
ウォーターポンプとラジエーター
ウォーターポンプの交換は、センターコンソールを外してエンジンにアクセスし、オイルクーラーのユニットまで外す作業で、3時間ほどかかります。部品は車台番号で2種類に分かれていました。ラジエーターは新品か中古で、DA17はフロントバンパーを外しての交換です。
ヘッドガスケットと載せ替え
ヘッドガスケットが抜けていれば、エンジンを降ろしてヘッドを外し、歪みがあれば面研をします。歪みがひどければヘッドの交換か、エンジンの載せ替え。分解して部品を手配するより早く費用も読みやすいとして、リビルトエンジンを選ぶ工場もありました。冷却水を足しながら乗り続けた結果、ヘッドガスケットが抜け、ヘッドが歪み、オイル消費まで増えて載せ替えになったDA64Wの例は、放置の行き着く先を示しています。冷却系やリコールについては、スズキの車台番号検索で確かめておくと安心です。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| DA64系 10万km超 | サーモスタット+ハウジング | 整備工場 | 約8,000円 |
| エブリイワゴン | キャップ+社外サーモスタット+工賃 | 整備工場 | 15,378円(工賃11,000円) |
| DA64V H24 | サーモスタット+ラジエーターキャップ2個(3時間) | 整備工場 | 18,700円 |
| DA64V H22 | ウォーターポンプ+サーモスタット+冷却水(3時間) | 整備工場 | 25,575円(ポンプ13,000+工賃5,000ほか) |
| DA64V 2011年 | K6Aの圧縮漏れ修理(ヘッドガスケット・バルブなど、23時間) | 整備工場 | 154,110円(工賃100,000円) |
サーモまわりで済めば1万〜2万円、ウォーターポンプまで含めても2.5万円前後。ところがヘッドガスケットまで進むと、工賃だけで10万円、総額15万円を超えました。差を生むのは、症状が出た段階で直したか、冷却水を足しながら乗り続けたか。ディーラーの見積もりは見つかりませんでしたが、民間の記録だけでも、早めの1.5万円と遅れた15万円の差がはっきり出ています。
同じ時期に重なるもの
冷却系が傷む10万km超のエブリイは、補機ベルト、ラジエーターの樹脂タンク、ヒーターホース、そしてK6Aではタペットの狂いによる2番の圧縮漏れと、続けて手のかかる部品が並びます。アイドリングの不調(ISCVの記事)や排気漏れ(エキマニ割れの記事)と重なると、1年で何度も預けることになるでしょう。オーバーヒートしたときの止め方と対処はオーバーヒートの記事、ヘッドガスケット全般はヘッドガスケットの記事にまとめました。