メーターに黄色のトランスミッション警告灯が点き、Dに入れても進まない。表示はNのまま、パドルでもレバーでも変速できなくなった。アルト(HA36S・HA36V)やキャリイ、エブリイ、ラパンなどに積まれたスズキのAGS(オートギアシフト、5速)では、こうした故障がよく知られています。AGSには3回のリコールが出ていますが、車種によって該当するものが違い、リコールで直るのはモーターなどの部品だけで、すり減ったクラッチは有償という線引きも。症状と、車種別のリコール、修理の費用をまとめました。
何が起きているかを確かめる
AGSは、マニュアルのミッションとクラッチを、油圧のアクチュエーターで自動で操作する仕組みです。主な症状は、警告灯の点灯、Dに入れても進まない、変速できない、走行中に特定のギアで固定される(5速固定のままエンストした例も)、クラッチの滑り、朝いちばんの発進でのジャダー、アクチュエーターからのギャギャ、ガーという異音でした。
| 症状 | 考えられる原因 |
|---|---|
| 警告灯、変速できない、走行不能 | 油圧ポンプを動かすモーターの固着・内部の短絡(リコール対象) |
| クラッチが切れない・つながらない | クラッチケーブルの錆と破断(リコール対象) |
| 滑る、学習が通らない、警告灯が数日で再点灯 | クラッチディスクの摩耗、レリーズベアリングの劣化、スプラインの錆 |
| ミィーンというポンプ音 | 正常な作動音のことが多い |
| 変速が遅い、ショックがある | AGSの元々の特性(故障ではない) |
変速のショックや遅さは、AGSがそもそも持っている性格で、故障と取り違えている相談も多い。診断機が無いと判断できないことが多く、警告灯とエンジンのチェックランプが同時に点いた例では原因の説が割れていました。作動油は一般に売られておらず、予防の整備がしにくい点も、整備工場が営業車には勧めにくいと書く理由の一つです。
修理の記録に出てくる距離は、7年6.2万kmのアルトRS、10万km前後でクラッチが減ったラパン、19万kmのエブリイなどでした。故障コードではアキュムレーターの異常(P190F)が出ていたラパンの例もあります。高速道路を走行中に発生した例もあり、警告灯が点いたら無理に走り続けず、安全な場所に止めて相談するのが安心でしょう。
車種で違う3回のリコール
AGSのリコールは3回あります。2018年11月は、キャリイ(DA16T)とエブリイ(DA17V)の約15.6万台で、レリーズベアリングやセレクトピストン、クラッチケーブルの取付部など6項目が対象。2023年3月は、同じキャリイとエブリイの約20.3万台(他社への供給分を含め約36万台)で、クラッチケーブルの錆、ポンプとモーターの通気、モーターのブラシの材質が対象でした。2024年7月は、アルト(HA36V・HA36S)、ラパン、ソリオ、スイフト、エスクードの約13.3万台で、モーターのブラシの材質が対象です。キャリイとエブリイは2024年の対象には入っていません。スペーシアにAGSを積んだ車は見つかりませんでした。
どうやったら直るか
リコールの作業と、その落とし穴
リコールでは、アクチュエーターを点検し、該当すればモーターやケーブルを対策品に替えて、プログラムを書き換えます。作業はアルトバンで約1時間、キャリイやエブリイで約3時間。研修を受けた事業所でないとできない作業とされています。整備工場が「AGSの罠」と書いていたのは、このあとの話です。7年6.2万kmのアルトRSでは、リコールでモーターなどを替えたあと、AGSの学習が通らず変速できなくなり、ミッションを開けるとクラッチディスクの摩耗やレリーズベアリングの劣化、スプラインの錆が見つかって、クラッチの交換は有償になりました。作業前の診断値は基準内だったそうです。リコールを受ける前に、クラッチの残りや学習値も見てもらえるよう頼んでおくと、あとで慌てずに済むでしょう。
有償の修理
有償の修理は、アクチュエーターの交換とクラッチ(カバー、ディスク、ベアリング)の交換に、診断機での学習を加えるのが基本です。クラッチの交換作業自体はマニュアル車とほぼ同じとされています。アクチュエーターだけ替えて、すり減ったクラッチを残すと学習が通らない、5日後に警告灯がまた点いた、という例もありました。放置すれば変速できず走行不能になり、高速道路で止まる危険もあります。保証延長は見つからず、クラッチは消耗品として保証の対象外でした。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| AGS車一般 | クラッチ交換 | 回答者・専門店の目安 | 約7万円 |
| エブリイバン | 警告灯の修理(内容不明、5日後に再点灯) | ディーラー | 12.5万円 |
| アルト(営業車) | クラッチオーバーホール+アクチュエーター | 整備工場の説明 | 25万円弱 |
| エブリイ(OEM車)19万km リコール後に警告灯 | ミッション本体と診断の提示 | ディーラー | 29万円(別の店でアクチュエーター+クラッチ交換して解決) |
| ラパン | アクチュエーター+クラッチディスク・カバー | ディーラー | 35万円 |
| アルトターボRS 2015年式 | アクチュエーター故障+クラッチ摩耗(入院約3週間) | ディーラー | 約40万円(概算) |
クラッチだけなら約7万円、アクチュエーターは約20万円、両方を替えると25万〜40万円が実例の幅でした。2023年のリコールの前に自費でアクチュエーターを直した人が、発表後に返金されたという回答もあり、過去の修理の請求書は取っておく価値があります。リビルトや中古のアクチュエーターの価格は見つかっていません。AGSは2025年にかけて国内の新車からなくなっていて、部品の先行きも含めて、直して乗るか考える材料にしたいところです。
同じ時期に重なるもの
AGSの不調が出る年数の車は、クラッチディスクとカバー、レリーズベアリング、フォーク、クラッチケーブル、セレクトピストンと、ミッションまわりの部品がそろって傷んでいます。アクチュエーターを替えるならクラッチも同時に、というのが整備工場の通例でした。エブリイなら冷却系(エブリイのオーバーヒートの記事)も同じ時期に順番が来ます。ほかの自動変速機の不調はATとCVTの記事、デュアルクラッチの話はDSGの記事にまとめました。