ボタンを押してもスライドドアが動かない。ピピッと鳴るだけで止まる、途中まで開いて戻ってくる。アルファードやヴェルファイアのパワースライドドアは、こうした相談がとても多い装備です。ただ、検索結果の上位に並ぶのは「スイッチが切れていた」「給油口が開いていた」といった故障ではない原因で、本当に壊れている場合とは分けて考える必要があります。先に確かめる設定と、症状から部品を絞る方法、実際の修理代をまとめました。
故障かどうかを確かめる
まず、壊れていなくても動かない状態を潰します。運転席まわりのPOWER DOORスイッチ(メインスイッチ)がOFFだと自動では動かず、手で開け閉めはできる。中からだけ開かないならチャイルドロック。助手席側だけ動かないときは、給油口の扉が開いていないかが確認どころ。トヨタの取扱書では、給油扉が開いていると助手席側のパワースライドドアは作動せず、手で開けても途中で止まる仕様になっています(確認できたのは30系の取扱書)。閉まる途中で何かを挟んだと判断すると、ブザーが鳴って少し戻り止まるので、レールに入った小石や砂で毎回同じ位置で止まることもありました。
バッテリーを外したあとは、手で一度全閉にして初期化が必要になる場合があります。20系では「メインスイッチをOFFにして手で全閉」という手順が紹介されていました。ここまでで動けば、故障ではありません。新しい30系や40系では、バックドアが動いている間は後席のドアが止まる、40系は窓が開いていると全開しない、といった仕様もあり、故障と勘違いしやすい動きです。
症状から部品を絞る
| 症状 | 疑わしい部品 | 見られた型式 |
|---|---|---|
| スイッチでは開かないが、ハンドルを引けば開く | リリースモーター(ロックを外すモーター) | 10系 |
| 少ししか開かない、引っかかる | ワイヤーのほつれ・巻き取り不良 | 10系の定番 |
| 外からだけ開かない | リリースワイヤーの伸び | 10系 |
| 外からも中からも開かない(閉めるのはできる) | リリースモーター、ハンドル側ワイヤーの調整 | 20系 H24・13万km |
| 最後の「カチッ」が閉まらず半ドア | イージークローザーのレバー固着、レール詰まり | 20系・10系 |
| 途中で止まる、戻ってくる | レールの汚れ、ローラー摩耗、蛇腹内の配線の断線 | 20系 |
10系はワイヤーの被覆が劣化してほつれ、絡んで詰まるのが定番で、整備工場のブログにも「よくある故障」として出てきます。H15〜17年式で新車から3〜5年のうちに症状が出て、保証で交換されたという声もありました。20系は事例が少なめで、イージークローザーやレールまわり、ドアと車体をつなぐ蛇腹の中の配線が切れたという記録が中心でした。修理の記録は左側のドアが多いものの、左に偏るという統計までは見つかっていません。
どうやったら直るか
清掃と注油で直る場合
レールやローラー、クローザーの汚れと固着なら、清掃と給脂で直ることがあります。20系のヴェルファイアでは、ディーラーでイージークローザーの交換を3万円と見積もられ、本人が注油したら直ったという記録がありました。部品代0円で済んだ例です。
部品を替える場合
ワイヤーやモーターが原因なら交換になりますが、どの単位で替えるかで金額が大きく変わる。10系はワイヤー単体の部品が出ていて、作業は1.5〜3.5時間ほど。モーターとワイヤーが一体の部品で替えると高くなります。リリースモーターも、部品一式なら3万円前後のところを、中のモーターだけ交換して1万1千円で直した整備工場がありました。ディーラーは一式交換、民間の工場は必要な部分だけ、という違いが金額の差になって出てきます。リリースモーターには社外の互換品もあり、1個1,100円前後から出回っていました。
直さずに乗る選択
ほつれたワイヤーが最後には切れ、手動のドアとして乗り続けている例もあります。ただ、ほつれた部分を自分で切ったら全く閉まらなくなった、という記録もあり、手を出すなら閉まる状態を保てるかを先に考えておきたいところ。パワースライドドアが動かなくても車検には影響しない、というのが整備士の解説です。手で開け閉めできる状態なら、修理代と使い勝手を天秤にかけて決める余地がある故障でしょう。スライドドア関連のリコールやサービスキャンペーンは、10系・20系とも見つかりませんでした。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| ヴェルファイア 20系 | イージークローザー交換の見積もり | ディーラー | 3万円(注油で直り0円) |
| アルファードV H15 | リリースモーターの中身だけ交換 | 整備工場 | 11,000円(一式なら約3万円) |
| アルファード 10系 | ワイヤー交換(部品持ち込み) | 整備工場 | 11,000円 |
| アルファード 10.9万km | アタッチメント・レギュレーター交換 | 整備工場 | 26,950円(部品11,550+工賃15,400) |
| アルファード 10系 | モーター+ワイヤー 片側 | ディーラー | 約6万円 |
| アルファードG H14 | ワイヤー新品修理 | 整備工場 | 75,000円 |
| アルファード H18 | 左右のワイヤー交換 | 整備工場 | 5万〜6万円(ディーラー見積もりは50万〜60万円) |
注油で済めば0円、部分的な部品交換なら1万〜3万円、ワイヤーとモーターを片側替えると6万〜7万5千円。左右のワイヤー交換で、ディーラー見積もり50万〜60万円に対し民間の工場が5万〜6万円だったという例は、一式交換か部分交換かの違いが極端に出たケースでしょう。20系で部品と工賃の分かる有償修理の記録は少なく、見積もりを取るときは「どの部品を一式で替えるのか」「中身だけの交換はできないか」を聞いておくと比べやすくなります。
同じ時期に重なるもの
スライドドアの不調が出る年式の20系は、ほかにも持病が並んでいます。2.4Lエンジンのオイル消費(新車登録から9年以内の保証延長があった)、ブレーキアクチュエーター(トヨタのキャンペーンで1回無料。中身は30プリウスのブレーキの記事と同じ部品の話)、ウォーターポンプやオルタネーター、ハブベアリングなど。ドアを数万円で直した翌年にエンジンやブレーキで大きな見積もりが来ると、合計の重さはまるで違ってくるはずです。ドアの修理を頼むときに、オイルの減り方やブレーキのポンプ音も一緒に見てもらうと、次に来るものの見当がつきます。