朝、セルを回すとキュッキュッと引っかかるように止まり、エンジンがかからない。アイドリングで車体が震え、DPFの警告灯も点いた。NV350キャラバン(E26)のディーゼル(YD25DDTi、2012年6月〜2022年3月)では、インジェクターの不具合がこうした症状の原因としてよく挙がります。ただ、整備工場の実例では4本まとめてではなく、悪い1本だけを替える例が多く、もっと安い部品で直った例も。症状の見分け方と、安い順の直し方、実際の費用をまとめました。

インジェクターが原因かを確かめる

インジェクターが開いたまま固着して燃料が漏れ続けると、圧縮の途中で燃料に火が付き、クランキングが止まるような症状になります。グロープラグの穴から黒い軽油が噴き出したことで原因を特定した例もありました。このとき燃料がエンジンオイルに混ざるので、オイル交換も必要になります。

症状 見つかった原因 直し方
セルが引っかかって止まる、始動しない インジェクターの固着・燃料漏れ 不具合の1本を交換、オイル交換
始動直後の打音 インジェクターの固定ボルトの緩み ボルトとガスケットの交換で済んだ例
アイドリング不調、振動、排ガスの悪化 インジェクターの詰まり、1本だけ噴射量不足 洗浄、またはその1本をリビルトに
燃料の圧力が不安定 サプライポンプのSCV(吸入調量弁) SCVの交換(部品7,300円の例)
DPF警告灯、加速不良 燃料フィルターの詰まり、インジェクターの汚れ DPFだけ直すと再発した例あり
インジェクターを新品にしても振動が直らない 圧縮不足、EGRやインテークのカーボン詰まり 吸気系の清掃など

DPFを交換したのに3か月後に警告灯が再点灯し、燃料フィルターに黒い粒子が大量に詰まっていた例は、燃料系の手入れが後回しになるとどうなるかを示しています。燃料フィルターのメーカー推奨は3万kmか2年とされる一方、6万kmや11.9万kmまで替えていなかった車もありました。修理の記録は14.8万km、18.5万kmなどですが、2023年式の新しい車でも燃料漏れや始動不良で交換された例があります。

インジェクターを外して点検すると、4本のうち1本だけが基準の噴射量に届いていなかった、という結果もありました。こうした場合は、その1本をリビルトに替えるか、4本とも洗浄して様子を見るかの選択。白煙と黒煙の違いから原因を切り分ける具体的な解説は見つかりませんでしたが、診断機で各気筒の補正値を見てもらえば、どの1本が弱っているかの見当は付きます。燃料が混ざったオイルで走り続けるとエンジン側の傷みにもつながるので、始動不良が出たらオイルの状態も一緒に確かめたいところです。

年式と型式の注意

同じ「キャラバン」でも、エンジンで話が変わります。先代のE25(2001〜2012年)のディーゼルはZD30で、持病は燃料噴射ポンプ。2007年8月〜2012年6月製造のE25には、噴射ポンプのシールから燃料が漏れるおそれがあるとしてポンプを対策品に替えるリコールも出ていました。2022年4月以降の現行キャラバンは三菱製の4N16に替わっていて、この記事のYD25の話は当てはまりません。NV350にはガソリン車もあり、通販で安く売られている「リビルトインジェクター4本セット」の中にはガソリン用が混じっている点にも注意が要ります。

どうやったら直るか

安い順に疑う

直し方は、燃料フィルター、SCV、インジェクターの洗浄、1本だけの交換、4本の交換、サプライポンプ、EGRやDPF、そして圧縮の点検、という順に費用が上がっていきます。インジェクターを交換したあとは、1本ずつの補正値(ID)の登録、エア抜き、燃料フィルターの交換が必要です。「4本まとめて替えるのが基本」という回答もありますが、整備工場の実例は、診断で悪いと分かった1本だけを替えるものが中心でした。ディーゼル用のリビルトインジェクターは1本8万円ほどで、1年保証の品もあります。

保証が残っていないか

NV350のインジェクターやサプライポンプを対象にしたリコールや保証延長は見つかりませんでした。ただし、2023年式の車がエンジン系の特別保証(5年10万km)で無償交換された例が2件あり、年式の新しい車は保証の残りを最初に確かめたいところです。日産の作業時間ではインジェクターの交換は1〜4本で2.1時間とされますが、実際は他の作業を含めて6時間、保証修理で12時間以上かかった例もあり、2.1時間は最低ラインの目安と考えたほうが安全でしょう。

直すにはこれくらいの費用がかかる

車種 内容 店 金額
NV350 31.7万km SCVを自分で交換 DIY 部品7,300円
NV350 11.9万km 燃料フィルターを自分で交換 DIY 部品8,730円
H25 NV350 19万km EGRクーラー交換 整備工場 47,410円
H26 NV350 18.5万km 4番インジェクター1本+EGRクーラー+燃料フィルター+オイル(6時間) 整備工場 177,903円
NV350 4WD インジェクター4本(1本62,273円)+工賃2.1時間 ディーラーの数字 約28万円(30万円を超えたという回答も)
2023年式 2.7万km インジェクター交換(12時間以上) ディーラー 0円(特別保証)

燃料フィルターやSCVなら1万円以下、インジェクターを1本替えるなら部品6万〜8万円に工賃、4本なら30万円近く。整備工場の17.8万円の例は、インジェクター1本にEGRクーラーなどの同時作業が乗った金額でした。先代E25の噴射ポンプは、ディーラーで26万〜40万円、民間のリビルトで15万円ほどという比較が出ています。インジェクターに行く前に、燃料フィルターとSCVで直らないかを確かめるだけで、数十万円の差が生まれるかもしれません。

同じ時期に重なるもの

インジェクターが傷む距離のNV350は、EGRクーラー(同時に替えた例あり)、燃料フィルター、SCV、DPF、ターボ(ASSYで13.8万円の部品)、オイルクーラーのガスケットと、燃料と排気の部品が続く時期です。インジェクターを替えた翌年にDPF、その次にターボという流れもあり得る。同じ商用ディーゼルの話はハイエースのインジェクターの記事、ディーゼルの煤はCX-5の記事でも扱っています。