走っているとエンジンルームのあたりから「シャリシャリ」と何かが擦れるような音がする。そう感じて調べ始めた人の多くが、最終的にたどり着く原因はエンジン本体ではありません。

整備の現場でこの音の出どころとして多いのは、ベルトで回されているプーリーやオルタネーターのベアリング、あるいはエンジンとは無関係のブレーキや足回りです。

シャリシャリ音の正体|エンジンから鳴っているとは限らない

「シャリシャリ」という擬音は、整備記録の中ではエンジンよりもブレーキや足回りの音として使われることが圧倒的に多い表現です。ブレーキパッドの摩耗、ローターの錆、バックプレートの接触が並び、エンジン由来はごく一部です。

一方で「エンジンから鳴っている」と感じて整備工場に持ち込んだ車で、実際に見つかる原因として最も多いのが補機ベルト周りのベアリング摩耗です。テンショナーやアイドラプーリーが筆頭で、次いでオルタネーターです。

4つの軸で切り分ける

音源がエンジン側か足回り側かを判断するには、部品名を当てるより先に「何と連動して鳴るか」を確かめるのが近道です。

  • タイヤの回転と同期する(速度に比例して速くなる)→ 足回り・ブレーキ側
  • エンジン回転と同期する(停車したままアクセルを煽っても鳴る)→ エンジン側の補機類
  • ブレーキを踏むと変わる → ブレーキ
  • ハンドルを切ると変わる → ドライブシャフト・ハブベアリング

停車したままアクセルを軽く踏んで音が回転に合わせて変わるならエンジン側、停車中は静かで走り出すと鳴るなら、エンジンを疑う前に足回りを見たほうが早く済みます。

エンジン側で多いのは補機のベアリング

エンジン回転に連動して鳴るケースでは、テンショナーやアイドラプーリーの内部ベアリングが摩耗し、連続した擦れ音を出していることが多くあります。走行中でも停車中でも、回転している限り鳴り続けるのが特徴です。

オルタネーターのベアリングが原因なら、走り出した直後の数秒だけ鳴る段階から始まり、やがて常時鳴り、最終的にバッテリー警告灯が点く流れをたどります。発電まわりの不調はオルタネーターの記事で触れています。

整備工場では、エンジンを止めてベルトを外し、各プーリーを手で回して確かめる手順が標準です。ベルトを張ったままでは音源を特定しにくく、通常の点検では見落とされることもあります。手で回して音やガタがあれば、そのベアリングが原因とほぼ判断できます。

擬音で部品は特定できない

同じ部品から出ている音でも、整備工場によって「シャーシャー」「シャリシャリ」「シャラシャラ」と3通りに書き分けられています。擬音から部品を逆算するのには無理があり、「何と連動するか」で絞るほうが確実です。

なお、タイミングチェーンの伸びやエンジン内部のメタルが原因で「シャリシャリ」と表現された整備事例は見当たりません。チェーンの音は「ガラガラ」「ジャラジャラ」と表現されるのが一般的で、カラカラ音の記事で扱っています。

シャリシャリ音を放置するとどうなるか

ベアリングの擦れ音は、それ自体で車が止まるわけではないため、しばらく様子を見てしまいがちです。ただ、摩耗したベアリングは元に戻らず、進行すると焼き付きに至ります。

テンショナーやアイドラプーリーが焼き付くと、ベルトが切れるか外れます。補機ベルトはオルタネーター、ウォーターポンプ、エアコンコンプレッサーを一本で回している車が多く、脱落した時点で発電と冷却が同時に止まります。冷却が止まればオーバーヒートは避けられず、そのまま走り続ければエンジン本体の損傷、つまり載せ替えの話になります。

ブレーキ側の音を「エンジンだろう」と放置した場合も、パッドが尽きればローターを削り、部品代が跳ね上がります。

シャリシャリ音の修理代の目安

修理代は、音の原因がプーリー単体で済むか、その先の補機まで及ぶかで大きく開きます。

原因・部位 費用の目安
プーリー交換(軽微なもの) 1万円程度(作業1.5時間ほど)
アイドラプーリー単体 1.7万円前後
テンショナー単体 2.4万円前後
テンショナー+ベルト 3.2万円前後
テンショナー+アイドラ+ベルト 4.4万円前後
オルタネーター 新品5〜10万円/リビルト品なら部品1〜1.5万円+工賃
ウォーターポンプ 2〜10万円
エアコンコンプレッサー 軽3〜8万円/普通車6〜15万円
ノッキング対策 添加剤なら数千円、プラグ等の交換で数千円〜数万円

プーリーやテンショナーの段階で手を打てば、1〜4万円台に収まります。車の価値と比べて悩むほどの金額ではありません。

問題は、原因がオルタネーターやウォーターポンプ、エアコンコンプレッサーまで及んだときです。ウォーターポンプは同じベルトで回っていることが多く、テンショナー交換のついでに不良が見つかると、合計で10万円を大きく超えることがあります。ウォーターポンプの記事で触れているとおり、10万km前後は交換時期が重なりやすい距離です。

さらに、ベルト脱落からオーバーヒートまで進めば、修理代は載せ替えの領域に入ります。走行距離が進んだ車では、その金額が車の価値を超えることも珍しくありません。

シャリシャリ音、3つの選択

原因の見当がついたら、あとはどう動くかです。取れる道は3つあります。

1. 直す

音の原因がプーリーやテンショナーで、走行距離にもまだ余裕があるなら、迷わず直す選択です。数万円で音は消え、ベルト脱落の心配もなくなります。

2. しばらく様子を見る

音が小さく、プーリーにガタも出ていない段階なら、次の点検まで経過を見るのも一つの判断です。「走り出しの数秒だけ」だった音が「常時」に変わったタイミングで整備工場に持ち込めば、ベルト脱落の前に手を打てます。

3. 乗り換える

走行距離が10万km前後で、見積もりがオルタネーターやウォーターポンプを含んで10万円を超えるなら、修理代と今の車の価値を並べて見る意味があります。

今の車にいくらの値が付くかは、メーカーと車種、年式などを入れれば、その場で概算が分かります。金額を確認したうえで直すか乗り換えるかを決められますし、査定額に納得できなければ売らない判断もできます。

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