信号待ちで車体がブルブル揺れ、朝いちばんにマフラーから白い煙が出る。坂道で力が出ず、エンジン警告灯が点いたことも。ハイエース200系のディーゼル(2.5Lの2KD、3.0Lの1KD、2017年以降の2.8L 1GD)で、10万〜20万kmを走った車によく出る症状です。原因として真っ先に挙がるのがインジェクターですが、洗浄で戻る車もあれば、別の部品が真犯人だった車もあります。補正値の読み方と直し方の段階、実際の費用をまとめました。
インジェクターが原因かを確かめる
インジェクターの状態は、診断機で各気筒の噴射量の補正値を見ると分かります。ノズルの周りにカーボンやスラッジが溜まって噴射が乱れると、コンピューターは噴射量を足したり引いたりして調子を保とうとする。その補正が限界に近づくと、振動や白煙として表に出てくるわけです。
| 補正値(mm3/st) | 整備工場の判断の例 |
|---|---|
| ±1〜2 | 正常 |
| ±5以内 | 正常の範囲(乗用系の許容上限を±5とする店も) |
| ±5〜±7 | 要注意。洗浄を勧める |
| ±7以上、または+5で上限に張り付く | 交換を検討 |
基準は店によって少しずつ違い、+5に達した時点で「これ以上補正できない」と交換を決めた工場もあれば、±7までは洗浄で様子を見る工場もありました。12万kmの車では、ディーラーが「4番が不良、全交換で30万円超」と見積もったのに対し、別の工場の診断では補正値が±0.6ほどで、洗浄で改善した例もあります。診断する店で判断が分かれる部品だということは、知っておいて損はありません。
インジェクター以外が真犯人のことも
DPFの詰まりの本当の原因が吸気のスワールコントロールバルブの煤の固着だった1KDの車、アイドリング不調の第一原因がサプライポンプのサクションコントロールバルブ(SCV)だった2KDの車、インジェクター先端の詰まりでDPFの再生温度が上がらなかった1GDの車がありました。補正値がMAXのインジェクターと始動不良のサプライポンプを両方替えた26万kmの車もあります。インジェクターを替えたのに直らない、という事態を避けるには、ほかの部品まで含めて診断してもらうのが近道です。修理の記録は12万km、14万km、21.8万km、25万km、26万kmと、10万kmを超えた車に集まっていました。
どうやったら直るか
洗浄、1本交換、4本交換
直し方は段階的です。まず洗浄。正常の30%しか噴いていなかった2本が洗浄で回復した2KDの例があり、4本の洗浄で13万円ほどでした。洗浄で戻らなければ交換で、予算に合わせて悪い1本ずつ替える方法と、4本まとめて替える方法があります。部品は新品のほか、リビルト品が1本4万円前後から出回っていて、ディーラーの30万円前後に対し6万円からと案内する専門店もありました。交換後はインジェクターごとの補正コードを診断機で登録し、学習値を初期化する作業が必須。ヘッドカバーのガスケットやシール類、燃料フィルターも同時に替える例が多く、樹脂のヘッドカバーが割れていてカバーごと替えた車もあります。
先にリコールを確かめる
1KDには、2016年11月のリコールがあります。2010年7月〜2016年7月製造のハイエースなど約24万台で、燃料ポンプや噴射ノズルの強度不足による燃料通路の亀裂と、EGRの制御不良でインジェクター先端が腐食し、煤が過剰に溜まる不具合が対象でした。処置はコンピューターの書き換えと、必要に応じたノズルや触媒の交換です。2014年12月〜2017年9月製造の1KDには、DPRの燃料添加弁の保証を登録後7年に延ばす措置もありました。1GDのインジェクター本体に関するリコールは見つかっていません。放置した場合、高速道路でのエンストのおそれを整備工場は指摘しています。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| KDH205V H19 | 4本洗浄 | 整備工場 | 132,000円 |
| 3型 ハイエース | リビルト4本+洗浄・脱着 | 整備工場 | 145,200円(リビルト4本100,000円) |
| KDH201V H20 26万km | インジェクター4本+シール類 | 整備工場 | 229,966円(部品209,060+工賃45,800) |
| 2.5L(DPF無し) | リビルト4本、補正書き込み込み | 整備工場 | 230,000円(3.0Lは約5万円高い) |
| KDH205V 21.8万km | インジェクター交換+SCV修理 | ディーラー | 230,000円 |
| KDH206V | リビルト交換(工賃込み) | 整備工場 | 249,700円 |
| 200系 | リビルト4本+ガスケット・診断 | 整備工場 | 338,800円 |
| GDH206 1GD 7.7万km | DPF洗浄・脱着、インジェクター清掃 | 整備工場 | 約230,000円 |
洗浄で済めば13万円前後、4本交換は民間で14.5万〜34万円、多いのは23万円前後でした。ディーラーの見積もりは20.7万円から30万円超。純正の新品は1本5万〜8万円台なので、4本を新品にするとインジェクターだけで40万円近くになる計算で、サプライポンプまで加わった1KDでは「40万コース」と書く工場もあります。差を生むのは新品かリビルトか、そしてSCVやDPFなど別の作業が乗るかどうか。ハイエースは海外での需要があり、20万kmを超えたディーゼル車でも値段が付きやすいと買取店が書いていて、修理するかどうかの判断では他の車種より手放す側の選択肢も見ておく価値があります。
同じ時期に重なるもの
インジェクターが寿命を迎える距離のハイエースは、サプライポンプ、DPFや燃料添加弁、EGRバルブとクーラー、吸気のスワールバルブ、樹脂のヘッドカバーといった燃料・排気まわりが続けて傷む時期です。インジェクターを替えた翌年にDPF、その次にサプライポンプと続けば、合計は50万円を超えることもあるでしょう。見積もりのときにDPFの差圧やSCVの状態も一緒に見てもらうと、次の出費の時期が読めます。同じ1KD系の話はNV350キャラバンの記事、ディーゼルの煤についてはCX-5の記事でも扱いました。