朝いちばん、ミニクーパーのエンジンをかけた直後の1〜2秒だけ、ガラガラと音がして、暖まると消えるので、そのまま乗っている――。2007〜2014年ごろの第2世代のMINI(R55・R56・R57・R58・R59、R60のガソリン車)で、タイミングチェーンまわりの音はよく知られた持病です。テンショナーだけ替えれば2万円前後、チェーン一式なら民間で9万〜15万円。ただし、ガラガラ音の原因がチェーンではなかった例もありました。見分け方と、段階ごとの費用をまとめます。
チェーンの音かどうかを確かめる
典型的なのは、冷えた状態でエンジンをかけた直後に1〜2秒ガラガラと鳴り、暖まると消えるパターンです。R56のクーパーS(2008年式・7万km)では「乗り始めの2〜3分カタカタ鳴り、5分ほど走ると消える」と書かれていました。進むと、チェックランプが点く、信号待ちのあとにエンストする、ファーストアイドルが上がらないといった症状が出ます。チェーンが伸びても警告灯はすぐには点かないので、距離と音で判断するしかない、という回答もありました。
| 音・症状 | 実際の原因 |
|---|---|
| 冷えているときの始動直後だけ1〜2秒ガラガラ、エンジンの中から | テンショナーの弱り、チェーンの伸び |
| 大きなガラガラ音、チェックランプは点いていない(6万km台) | フリクションローラー(ウォーターポンプを回すローラー) |
| 伸びを疑ったがバルブタイミングは正常 | テンショナーのボルトとひどいスラッジ |
| チェックランプ、信号待ちでエンスト | チェーンの伸びが進んだ状態 |
R56のクーパー(6万km台)で大きなガラガラ音がした例では、原因はチェーンではなくフリクションローラーでした。整備士は、チェックランプが点いていないことと、音がエンジンの中か外かを聴診で確かめて見分けています。整備工場では、専用の工具でクランクとカムを固定し、工具がすき間なく入るかどうかで伸びを判断していました。
出やすい車と時期
原因は、テンショナーの押す力の弱り、チェーンの伸び、樹脂のガイドの割れの三つ。オイルの汚れや交換の間隔が悪いと進むとされ、「6万kmでこの汚れ」と手入れ不足を指摘する整備工場も。事例は5万km、7万km、9.8万km、13万kmで、2007〜2014年の車にありました。前期のクーパーS(N14)に特に多いという店がある一方、クーパーや後期(N16・N18)でも、2012年式や2014年式のR58でチェーンの伸びで交換した例があり、後期なら安心とは言えません。R60のディーゼル(クーパーD)は別のエンジンなので対象外です。
どうやったら直るか
テンショナーだけの交換
初期の音なら、テンショナーを対策品に替えるだけで直った例があります。作業は1時間ほどで、工賃込み1.5万〜2万円。ただしチェーンが伸びていると効きません。自分で替えた人の記録では、外したテンショナーが「第2世代の対策品」で、新品より縮んでいて、替えてもあまり静かにならなかったとのこと。対策品も消耗品だと考えておいたほうがよさそうです。
チェーン一式の交換
チェーン、テンショナー、ガイドレール、スプロケット、クランクシール、パッキン類をまとめて替える作業で、カムを固定する専用工具が必要。作業は5〜10時間、1〜2日の預かりでした。チェーンの伸びは軽かったものの、テンショナーの不具合と区別できなかったので一式を替えた、と書いた整備工場もあります。放置すればコマが飛び、バルブとピストンがぶつかってエンジンが壊れるおそれがあり、割れたガイドがオイルパンに落ちていた例もありました。音がいつもより明らかに大きいときは、エンジンをかけないほうがよいとする解説もあります。
14年・13万km無交換の例
14年・13万kmでチェーンを一度も替えていなかったR56では、走っている途中で激しい音が出て、かけ直すと消えたものの、ガイドの破片がエンジンの中に落ちたのではとオーナーが心配していました。型式のコード(ABA-MF16、DBA-SV16、ABA-ML16、ABA-MM16、DBA-SX16Sなど)を伝えれば、整備工場でもエンジンの世代と部品の手配の見当がつきます。
リコールと保証
タイミングチェーンやテンショナーのリコール、保証延長は見つかりませんでした(MINIの公式ページは読み込めず、確認できていません)。ウォーターポンプの樹脂製からアルミ製への変更は、部品の改良でリコールではありません。
直すにはこれくらいの費用がかかる
| 車種 | 内容 | 店 | 金額 |
|---|---|---|---|
| R56 JCW 2010年 | テンショナーを対策品に予防交換 | 整備工場 | 19,800円 |
| R56クーパーS 2012年 | チェーン一式(キットは持ち込み) | 認証工場 | 87,300円 |
| R55クーパーSクラブマン 2008年 | チェーンキット、クランクシール、ベルト | 認証工場 | 93,000円 |
| R56クーパーS 2010年 | チェーン一式、レール、クランクシール | 認証工場 | 123,800円 |
| R56クーパー 2008年 5万km | チェーン一式、ウォーターポンプ、サーモケース | 認証工場 | 162,074円 |
| R56クーパーS 2010年 | チェーン一式、アルミの対策ポンプ、プーリー類 | 認証工場 | 202,000円 |
| R55クーパークラブマン 2008年 | チェーン一式+バルブステムシール16本+O2センサー | 認証工場 | 245,800円 |
テンショナーだけなら2万円前後、チェーン一式は民間で9万〜15万円、ウォーターポンプやベルトも一緒に替えると16万〜20万円台、ステムシールまで含めると25万円前後。H21年式のR55クラブマンでは、チェーン一式を車検整備と一緒に頼んで総額22.9万円(法定費用込み)という例もありました。部品を持ち込んで8.7万円に収めた例もありましたが、保証の扱いは店に確かめておきたいところです。ディーラーの金額は見つかりませんでした。
同じ時期に重なるもの
チェーンを替える時期のR56は、ウォーターポンプ、サーモケース、フリクションローラー、ファンベルトとテンショナー、ヘッドカバーのパッキン、クランクのフロントシール、バルブステムシール(オイル下がりの白煙)、VANOSのソレノイドと、エンジンの前側の部品がそろって順番を迎えます。チェーンを開けるならポンプとベルト類も一緒に、と勧める店が多いのはこのためでした。チェーンの音全般はカムチェーンの記事、BMWのポンプはBMWのウォーターポンプの記事にまとめています。